マッスル無双~筋力値限界MAXまで上げた俺は、異世界をマッチョ無双する!~  

いおにあ

俺の筋肉異世界無双!


「パンパカパーン!おめでとうございます!あなたは今回異世界転生するチャンスが与えられました!」

 ハイテンションな女神様から、唐突にそう告げられた。女神様は、俺の反応にお構いなく話を続ける。

「さてさて、色々とステータスはお好みのままにできますが、何がいいかな?」

「うーん、そうだなあ・・・・・・」

 俺は自分の腕を見る。校内体力テスト万年最下位の、貧相な俺の身体。

「じゃ、とりあえず筋肉ください。というかそれだけでいいです」

 そういうことで、俺――モブオは筋肉マックスで異世界転生することになった。


♢ ♦ ♢


「きゃあああっ!助けてー!」

 悲鳴が聞こえたので、俺はすかさずそちらに向かう。十五才くらいの可憐な少女が、森の中で邪悪なオークたちに追いかけられていた。


 俺はすかさずオークたちと距離を詰める。


「でいぃぃぃ!!」

 最初のパンチで、三体のオークが吹っ飛ばされる。続いての拳のもう一振りで、オークたちは半分以下になる。こうなるともう、オーク軍団は総崩れとなる。俺は目にもとまらない速さのパンチをオークの残党にお見舞いして、奴らを潰滅させる。


「ふう・・・・・・人助けをして、いい汗かいたな。おっと、そうだ。お嬢さん、もう悪いオークどもはこの俺が倒しましたからね。ご安心を」

「きゃあぁぁぁぁ!」

 先ほどに負けず劣らずの甲高い悲鳴をあげて、卒倒するお嬢さん。


「・・・・・・しかたないか、この見た目だもんな」

 俺は筋肉値を限界マックスまで高めた身体を見る。


 筋骨隆々も行き過ぎると、外見がモンスターみたいになってしまう。しかも、オプション機能とやらで身体の色を変幻自在に変えられるようにしたのがマズかった。肌色モードだと、辛うじて人間っぽく見えるが、それが逆に気持ち悪いという人も少なからずいる。だからといって緑色にでもしたらもうインクレディブル・ハルクだし。


 だけれど、まあそんなことはいいか。望んだ筋骨隆々の肉体が手に入ったのだし。


「さて、と。この人をどうするか」

 俺はそう言うと、俺の姿を見て卒倒したお嬢さんを肩に担ぎ上げる。別にこれからどこかに連れて行って乱暴しようというわけじゃない。こんなところに放っておくのも危ないので、最寄りの街まで運んでやろう、という親切心だ。


 自分を見て気絶した人のことも気遣うなんて、いい奴でしょ俺。


 

♢ ♦ ♢



 ガタガタガタガタ・・・・・・。平原に、敵軍が姿を現す。


「モブオ殿、よくぞ我らに協力してくれた。痛み入る」

 連隊長は、深々と頭を下げる。


「いや、いいですよ。乗りかかった船ですし」

 この連隊長は、昨日俺が森の中で助けてあげた人物だ。なんでも、超大国との無茶な戦争に駆り出されて、時間稼ぎのために捨て身の無謀な作戦を命じられ、連隊もろとも逃亡していたという。で、逃亡中のところをを野生のゴブリンに襲われていたところを、俺が救ったというわけ。


「しかし、本当に倒せるのか?あの超大国の最新兵器は、とにかく強いと聞くが」

「なーに、任せておいてくださいな。この筋肉で何でも解決しますよ」

 俺は巨木のように太い腕を見せつけて、力を誇示する。


「おお、来たぞ。あれが超大国の最新鋭の兵器だ」

 そうして、平原に現れたのは――。

「え、あれって戦車ですか?」

 眼前に大量に現れたのは、紛れもなく戦車――キャタピラで移動して、回転する砲塔が備え付けられている戦車だった。


「左様。あれが超大国が量産化に成功したらしい。一方、我ら連隊は騎馬兵・・・・・・結果は火を見るより明らかだろう」


 さすがにこれは逃亡したくなるな。


 ちょっと不安だったが、俺は虚勢を張って連隊長に言う。

「なーに、大丈夫。この筋肉にお任せを」

 俺は力こぶを作る。


 さて、戦争開始だ――。



「とりゃああぁぁぁ!」

 俺は全速力ダッシュで、敵陣に単騎突入する。ムキムキなのに、この身体は規格外のスピードが出せるのだ。


 突然現れた、ムキムキの人間なんだかモンスターなんだか分からない存在に、敵軍は随分とたじろぐ。


「撃て、撃て、撃ちまくれー!」 

 戦車が次々と砲撃してくる。いくつかは命中する。だが、そんなものに効果はない。俺の無敵筋肉は、戦車から放たれた砲弾すら、その弾力で跳ね返すのだ。


「うわぁぁぁ、化け物だ!」

 猪突猛進、一直線に敵陣に突入する俺の迫力に圧倒され、逃げ出す兵士たち。


「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 俺は最前列に陣取っていた戦車の一台に肉薄する。そして、その戦車の黒々した手をガシッと掴み――――


「――ウルァァァァァッ!」


 俺はマッスルパワー全開で、盛大に戦車を背負い投げする。


 ボッゴォォォォン!!戦車はひっくり返り、地面に激突して爆炎を噴き上げる。


「ヒィィィッ」

「まだだ、とにかく撃てー!」

 最新型の秘密兵器をぶち壊され、敵軍は隊列を乱して総崩れとなる。こうなれば、後はたやすい。


 俺は味方の軍に雄叫びをあげる。


「みんな、敵は倒れたぞ。今こそ攻撃だ!」

 うぉぉぉー!という歓声にも似た叫びが聞こえてくる。俺たちの反撃が始まる。



 その後、この勝利を皮切りに超大国との戦争に俺は遂に勝利した。すべては俺の筋肉の勝利といっていいだろう。


 さあ、今日も仕事だ。なんでも沈没しかかった豪華客船があるという。

 俺は猛ダッシュで海の上を走り、沈没しつつある豪華客船へと向かう。俺の筋力で、沈む前に陸上まで運んでやる。


 今日も俺の筋肉は大忙しだ。

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