もういくつ寝ると

 そんなわけで始まった、マスターのお勉強会。

「むうぅ、年号ニガ手ー」

 マスターは歴史の課題に悪戦苦闘中、リボンの青色も、どうにも冴えていない。

「50分経過しました。15分間休憩しましょう」

 会長殿をサポートしていた、というか、主にマスターが吾輩にカンニングしてくるのを監視していたケイさんが、体内時計をチェックして告げた。

「むえぇやっと休憩~。……あ」

 大きく伸びをしたマスターの鼻の頭に、開いていた窓から入ってきた花びらがふわりと落ちてきた。

「桜だあ。年々咲くのが早くなるねえ」

 気づけば外は暖かい春の陽気。満開になった桜が、花びらを散らしている。

「昔は4月あたまくらいが見ごろだったそうだな」

 こういうことにはとんと関心のない会長殿も、目の前の光景に少しは心動かされたようだった。

「今年の桜の開花は平年より3日早い観測です。もっとも、”平年値“というのも年々早まっているのですが」

 吾輩はすばやく<検索>を入れて二人を補足した。

「4月にはもう葉っぱしか残ってないんだよねえ。そんな意味じゃ、現在いまの子ってかわいそ」

 マスターが鼻にくっついた花びらをつまんで、少し寂しげにつぶやいた。

「とりあえず、年が改まってどれだけ新入生が入ってくるかだな。わがロボ研の悲願、部活昇格。私の代のうちに達成したい」

 会長殿のほうは、いち早く現実の問題に戻ったようだった。

「新入会員、どんな子が入ってくるかな? 新しいロボの子とかも楽しみ♪」

「どうでしょうねえ。なにせロボはハードルの高い趣味ですから。ケイさんはどう考えます?」

 のんびりと問いかけた吾輩たち主従に、ケイさんはいつものようにやや冷たい声で答えた。

「それを回答している時間はケイにはありません」

 どうもにべもないケイ殿の答えに、吾輩とマスターは思わず顔を見合わせた。

「「なんで?」」

「15分経過しました、ひまわり様。次の50分間は古典の課題を進めましょう」


※推敲段階の原稿をmixi日記にて友人限定で公開しています。

 また、タイミングを見てpixivにも投稿予定です。

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吾輩はロボである ~とある部活の贈り物《ホワイトデー》~ 飛鳥つばさ @Asuka_Tsubasa

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