筋肉といえば肉、肉といえば焼き肉

凰 百花

目指せ、焼き肉食べ放題

 人里離れたその場所にあるダンジョンは小規模で三層しかない。一層目ではコカトリス、二層目ではオーク、三層目ではミノタウルスしか出現しない。しかもドロップ品は肉のみだ。部位ごとにドロップするとはいえ肉しかでない。美味しい肉がドロップするとしても、所詮は肉のドロップのみなので冒険者には不人気だった。

 惜しい、男は思った。これほど旨い肉が食えるというのに、依頼しなければ冒険者には取ってきては貰えない。もっと肉を積極的にアタックしては貰えないだろうかと。そうすれば、もっと肉を安く提供できるのに。そこで男は行動した。


「マスター、納品を頼む」

ガタイの良い冒険者が、窓口に来た。肉のダンジョンの傍には冒険ギルドの派出所がある。そこの窓口に並ぶ冒険者は多くは低ランク者だ。

「よう、ジョナサン、レナード、久しぶりだな。おう、相変わらずすごい量だな。しかもミスジにサーロイン、ザブトン、うわみすじ、相変わらず引きが良いね。ほい、これが肉の代金だ。それから、はい、福引券だ」

「おう、10枚もか。さっそく隣に行かなくちゃな」

ギルドの派出所の隣は焼肉店であり、宿屋も兼ねている。

「ミナちゃん、お久しぶり。福引券もってきたよ」

「あら、お久しぶり。そうだ、お二人共B級に昇進したんですって。おめでとう」

焼肉店では、可愛い店員さんが迎えてくれる。ミナは二人に上に丸い穴の空いた四角い箱を差し出した。

「はい、福引券10枚分ね。クジ引いてね」

「やったぜ。宿泊無料券と焼き肉全種類が皿1枚無料だぜ」

 肉を納品するとその分量と質に応じて福引券がもらえる。福引券をもって派出所の隣にある焼肉屋兼宿屋に行くとクジを引けるのだ。クジは、カルビ皿1枚無料から食べ放題まであり、宿泊券が当たることもある。それ以外にも色々な品物、ポーションだとか野営の道具などが当たるパターンもある。早速食事を取ることにした二人がテーブルに付くと

「B級の昇進祝いよ」

ミナが小型のビールサーバを設置した。お祝いに小型サーバー1台分が飲み放題だ。

 今はマスターと呼ばれる男の働きで肉のダンジョンは初心者向きのものと認定され、色々と優遇処置がなされるようになっている。手弁当で肉ダンジョンの入り口にギルドの派出所と宿泊兼焼肉屋を作った時は、皆に笑われたのも懐かしい。宿屋兼焼肉屋の店員は引退した冒険者で、アドバイスなどを受けられるようになっている。駆け出しの講習施設としても肉のダンジョンは役立っている。まず、ここにくれば食いっぱぐれはないし研鑽も積める。この二人も元は孤児で日銭を稼ぐために冒険者になった。この肉のダンジョンに通い、腕を磨いて金を稼いでB級になったのだ。

「やっぱり、ここの焼肉が一番美味い」

焼肉屋はチェーン店になっていて全国展開したので、このダンジョンの肉はチェーン店でどこでも食べられるようになった。このダンジョン本店では希少肉はメニューにはない。いい肉は王都の店でそれなりのお値段で提供されているからだ。でも、その利益はここにも還元されている。でも、ここから巣立った冒険者達に言わせるとこの店の肉が一番美味いらしい。


「そういえば、マスター知っているかい?色んな魚がドロップするダンジョンがあるんだってさ」

「ほう、そりゃ寿司屋ができるね」

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筋肉といえば肉、肉といえば焼き肉 凰 百花 @ootori-momo

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