後編

 二人は小中高と一緒で、登下校も一緒だった。

 だから、クラスメイトは付き合っているものと思っていた。それが、まずかった。


 涼太りょうたは成長するたびに体も身長も大きくなり、悪目立ちしていた。そして、それが原因でよく喧嘩を売られ、涼太は真面目にそれを買い、全て勝った。


 だから、力では勝てないと悟った男子たちが、あかりを、襲った。

 

 涼太は激怒し、男子たちを叩きのめした。そして、灯に自分の服を被せ、言った。



『責任を取らせてくれ』



 短い言葉だが、深い想いが詰まっていた。

 彼氏と思われてしまった責任、怖い思いをさせてしまった責任。付き合う事で守らせてほしいという責任。

 涼太の精一杯の告白だった。


 こうして二人は付き合い、幼馴染故に互いを知りすぎていた為よく喧嘩したが、すぐに仲直りし、三年間過ごした。


 だが、卒業すると同時に別れてしまった。


 灯は都会で就職し、涼太は農家を継いだ。何を言うわけでもない、自然消滅だった。



 ◯◯◯



 けれど、灯は帰ってきた。雑俎ざっそとした人に、人間関係に疲れて。都会で新しい恋もしたけれど、幸せを感じられなくて。


「都会はどうだ」


 灯が自分を見つめていたのに気づいたのか、沈黙を破りたかったのか。先に声をかけたのは涼太だった。


「……楽しかったよ」


「そうか」


「でも……、疲れた。人にも町にも」


 灯は前を向き俯いた。


「みんな、自分のことばかり。人情ってものがないんだもん」


「そうか」


「かっこいい人もいっぱいいたけど、見た目だけだった。中身はクズっばかり、ヒモ男だったり、二股男だったり」


「そうか」


「もう、嫌だ……、戻りたくない……」


「……なら、ずっとこっちにいればいい」


「え……?」


 灯は驚き涼太を見た。


「ここで就職し直せばいい」


「でもー、ここって求人ほぼないよねー?」


「……ある」


「えーどんなー?」


「……農家の嫁」


「え!?」


「……ずっと、お前が忘れられなかった」

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あの日、置いてきた恋心を。 冥沈導 @michishirube

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