MMORPGといえば脳筋支援職だよね

第1話

　筋肉は裏切らない。ただし脳筋は裏切る。

「バフ積みって知ってる？」

　MMORPGでフレから言われたことだ。

　フロントタンク。所謂壁職を専門やっているフレに言われて、初めて気づいたことがある。今自分が使っている魔法職が、支援スキルに一切ポイントを振っていないということに。

「普通に火力出てるから行けると思ってたんだけど」

「あのさぁ。いま使ってる職業（クラス）はバフと火力を両立できるから、タンクが挑発スキルガンガン焚けるんだよ？」

「防御強化と自動回復（リジェネ）の支援スキルあってこその職業なんだから、スキルポイントの振り分けはしっかりしてくれよ」

　友人のタンクとしてのプレイヤースキルで、どうにかなる範囲のクエストから外れるとかなり厳しいらしい。

　本来であれば、この職業はまず防御支援と回復支援の二つのスキルを取得する。その後に魔法を覚えていく。フレと一緒にプレイしているから、火力スキルを優先して振り分けていたのが仇となった。

「いま行ってるクエストだと、防御支援なしだと回復薬（ポーション）がぶ飲みしながらになるから挑発が使えなくなる」

　回復アイテムを無限に持ち込めるわけではない。

「だからいま余ってるスキルポイントを支援スキルに全部突っ込んで」

　フレはお怒りのようである。当然と言えば当然だが。

「このクエストのボスは二WAVEレイド方式のボスだから、挑発の有無で難易度がかなり変わる」

「理想はフルパで挑む方が安定するんだけど、脳筋初心者魔法職を野良に連れて行くわけにいかない」

　そう言われると何も言い返せない。大人しくフレの言う通りに、上級魔法を覚えるために残していたポイントを支援スキルに全て振る。

「振ったらポタ踏んでボス部屋いこ」

　ボス部屋の前にある休息（キュア）スペースからボス部屋に入る。

　ボス部屋は一本道の通路の向こう側からエネミーの群れが現れる。それをフレは一人で受け止める。

「さっき言った通り防御バフから自動回復かけて」

　フレに言われた通りにバフを掛けると、すぐに魔法の詠唱を始める。

　第一WAVEは第一層にいたようなエネミーばかりで、経験値（EXP）稼ぎに最も剥いているクエストと言われる所以を見ることができた。

「タンクがヘイト管理していればクリアは簡単。だけどヘイト管理できないと苦行。第二WAVEはボーナスゲー」

　本命は第二WAVEに出てくるボス。しかし、上位ランカーとして名前がたまに出てきているフレの敵ではなかった。

　第二WAVEの単体ボスを討伐すると、ボスドロップと報酬をありがたく吸わせてもらう。