第6話 さよならなんて言えないよ

ボクは犬が好き

大きいし

強いし元気だから


ボクは犬が大好き

言うことは聞くし

お手もするしお座りもする


ヒモをつけてお散歩もできる

勝手にどっかに行かないし

いつもそばにいてくれる


小さいし弱いし

すぐに病気になるし


言うことは聞かない

お手やお座りなんか

絶対しない


ヒモをつけて

お散歩なんかできないし

いつの間にかどっかに行っちゃう


わがままだし勝手だし

ボクは猫なんか大きらい


とっても大事にしてた

一番大好きだった


抱くととってもあったかかった

小さくて真っ黒なクロ


いつものようにお散歩に出て

夜に帰ってきたら

歩くのもフラフラなの


ご飯を食べないんだよ

小さなお口から

白い泡が出てるんだよ


お外で何か変なもの

食べちゃったのかな


とっても苦しそうだし

横になって起きないんだよ


ママがあちこちの病院に

電話をしてくれたけど

夜だから電話に出てくれないの


クロが大好きな

牛乳をお皿であげたの


ちょっとなめただけで

どうしてなのか吐いちゃった


「クロ大丈夫」って

頭も体もやさしくなでた


苦しそうだけど

何にもしてあげられない


なでながらクロって

もう一度声をかけたら

首だけすこし起こして


とっても小さい声で

「ニャー」とお返事してくれた


ボクは声がふるえちゃったけど

「クロがんばって」って

もう一度声をかけた


でもねもうお返事してくれないの

いつもあったかかった

体がすこし冷たくなった


次の朝ママといっしょに

ちっちゃなかわいい箱に

お花もいっぱい入れて

知らないところにあずけてきたの


ボクはね犬が大好き

猫はもう好きになれないよ


大好きだったボクのクロ

今だってきっと

ボクのそばにいるはずだよね


だから だから・・・・・

さよならなんて言えないよ

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わすれないで 希藤俊 @kitoh910

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