彼は立っていた。

くすのきさくら

だらけていたのは――俺?

「――暇だ」

「どうした?」


 俺がつぶやくと俺の正面につり革も持たず友人がスマホから視線を外し返事をしてきた。

 今俺が何を言いたいかというと。この移動時間。みんながどう思っているのかはわからないが。俺はもったいないと、常々思っている。

 何がもったいないかって?だから、この移動時間だよ。俺はいつも片道20分の電車移動をしているがこの時間は何もできない。

 俺の正面にいる友人はいつもスマホをいじっているが。機械が苦手の俺はスマホなんて使わない。『なら、本でも読めば?』と以前正面にいる友人に言われたが。文字を読むのも俺は嫌いだから無理だ。ちなみに、勉強とか一番嫌いなやつだからな。俺が好きなのは身体を動かすことだ。筋トレとか好きだな。なんか身体を動かしていると安心するんだよ。とにかく座っているのが嫌なのだ。ちなみに自慢ではないが体育は俺に任せろだ。

 とにかく。車内も教室と同じで何もできない。これが俺は嫌。暇なのだ。

 

 ちなみに、以前つり革で筋トレしていたら車掌さんに注意された。今もそうだが。俺たちが乗る電車基本空いているため。つり革を持って体操選手みたいなことができると高校に入学し。このガラガラの電車を利用しだして、すぐに思いついたのだが――即注意された。という過去があった。


「いや、やっぱただ座っているだけとか暇すぎるだろ?この毎日の無駄な移動時間を何とかしたいんだよ」

「またそれか。なら前も言ったけどさ。走って通学すれば?」


 友人は呆れ気味にスマホをカバンに片付け腕を組んだ。


「それは一度したら1日学校で寝ていて指導室に呼び出し食らったからな」

「あー、そういえば」

「っか、お前。なんでいつも立っているんだ?」

「筋トレ中だけど?」

「へっ?」

「ちゃんと筋肉付くぞ?数か月継続中だ」


 ガタゴトと揺れる車内そんな中仁王立ちの友人。全く芯がブレていなかった。


(了)


 

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