パパ上様日記 〜筋肉よりも私が裏切る〜 KAC20235

そんなわけない。だってＥ判定

　私ことパパ上は、筋肉が凄い。

　一時期、筋肉は裏切らないと必死にトレーニングに励んだからということもあるが、人並み以上には筋肉がある。

　見よ。この上腕二頭筋。筋肉こぶを作って家族に筋肉自慢。

「うん、凄い凄い」

「柔らかい。親指で押し潰してみてもいい？」

「痛いからやめ――って、本気にやるやついる！？」

　ふっ。筋肉が美しいと思わない私の家族には分からないのであろう。

　息子はゲームに夢中で適当。妻は筋肉こぶの柔らかさを確認したら後は潰しこみ作業に勤しもうとする。それを実際行ったのが、娘だ。

　どうやら私は、最愛の家族に、筋肉の素晴らしさを教えなければいけないようだ。

　私は両腕を軽く開いて広背筋を大きく広げる。

　フロントリラックスというボディビルのリラックスポーズで最初に披露する正面美のポーズだ。リラックスできないポーズなのにリラックス……。

　すかさずフロントリラックスから両腕をまげて持ち上げ両腕の筋肉を見せる、俗に言うマッチョポーズへ移行。

　みよ、このぺこんっと、控えめに盛り上がったこぶ。

「はいはい、凄い凄い」

「柔らかいわね、お腹と一緒で。やっぱり親指で潰すね」

「うん、痛いからや――って、二人でそれぞれがこぶを潰すのやめてっ！？」

　相変わらず息子はゲームに夢中。見向きもしない。

　妻は左腕、娘は右腕の筋肉こぶを執拗に押し潰す。

　おまけにやってみたかったと鉄棒に見立てて腕にぶら下がろうとする始末。

　やめろ。娘ならまだなんとか……ならんが、お前がやったら確実に腕折れるわ。

　そんな妻が、呆れたように私の体を見て言う。

「まあ、いいから。服、着ろ？　トランクス履いただけで着たとは言わんよメタボ」

　我が家は今日も。

　平和だ。

　ああ、筋肉、欲しいなぁ……。

　そんな私が筋肉に魅入られた未来の夢を見ながら、今日も、贅肉と化したお腹の肉を削ぎ落とすため、腹筋を頑張る。

　目指せ綺麗な体！　脱却、Ｅ判定っ！（三日に一回！　最近サボりがち！）