Go back まっする

那智 風太郎

 

「さあ、私がやってきたからにはもう心配はいらない。全てを任せてくれ」


「いててて。えっ、いや、あんた誰だよ」


「私の名は古村。深夜ひとりで苦しんでいる人たちを救うために日々、位相空間を巡回パトロールしている者だ」


「ぐっ……なんかよく分からんけど、そりゃ助かる。じゃあ、さっそく」


「いや、その前にちょっと状況を確認させてくれ」


「状況ってなによ。見りゃわかるでしょ。いててて……」


「まずは原因の究明が必要だ。このような悲劇を二度と繰り返さないためにね」


「はあ、なに言ってんだ、あんた。そんな場合じゃ……」


「なあに、すぐだよ。この過去を見通せる特別なスコープを装着して君を見ればあっという間だ。ああ、ふむふむ、ああ、そういうことか、なるほど、ふうん……」


「おい、早くしてくれ。もう限界なんだ。いててて……」


「君、原因が判明したぞ」


「くぅぅ……なんだよ……」


「ズバリ食生活だ。君、言っちゃ悪いがずいぶんと偏食だね。好きなものは焼肉とラーメン。野菜嫌いで果物なんかもほとんど食べない。それどころか毎晩、缶ビールを何本も空けているじゃないか」


「ぐっ、それがなん……」


「それにマイカー通勤とデスクワークで運動も足りていない。要するにミネラルなどの電解質の不足。アルコール摂取による脱水。そして日々の運動不足という不摂生が祟ってしまったというわけさ」


「……ふう」


「だが大丈夫。明日からはきちんと野菜を食べ、ビールの量を減らし、飲んだ後には必ず水分補給をすること。そして適度な運動やストレッチを心掛ければもうこの悲劇に見舞われることはおそらくないだろう」


「……おい」


「では、そろそろ私の真骨頂を見せるとしようか」


「いや」


「遠慮は無用。さあ力を抜いて、このハンドパワーでその痛みを取り払って……」


「治った」


「なんだって?」


「もう治ったと言った。だからさ」


「ふむ」


古村コムラカエれよ」


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