マッチョ屋敷

@ns_ky_20151225

マッチョ屋敷

 相も変わらずお噺をひとつ。

 ボディビルという競技がございます。筋肉を美的に作り上げていく。その道を究めるにはなかなかの努力がいるそうです。

 ここにもビルダーが集うジムがございます。ここは建物が変わっておりまして、元が富豪のお屋敷だったそうで、改造致しましてジムとしております。ゆえにいつの間にやらマッチョ屋敷と呼ばれるようになりました。


 さて、このマッチョ屋敷に伝わる怪がございます。出る、と言うんですな。昔あるビルダーが筋肉を極め、肉体美を究め、いよいよ大会に出場せんとポージング練習をしていた時、地震で崩れてきた壁に押しつぶされたのだそうです。

 以来、草木も眠る丑三つ時、そのビルダーが現れまして、規定の八つのポージングを順に決めていく。出場できなかった恨みがこもっておりますので最後まで見たらいけない。震えて死んでしまうと言います。しかも死体はしぼんで筋肉のない情けない姿になると言うのでビルダーに恐れられておりました。


 その噂を知ったあるビルダー。俺が確かめてやるとやってきました。

「なに、六つか七つ目で逃げればいいんだろ? それにそんなに思い残すほどの筋肉なら見てみたい。参考にもなるだろう」

 周りが止めるのも聞かず、真夜中、マッチョ屋敷に入りました。


 丑三つとなります。ぼうっと陰火が灯りましてマッチョ。なるほど見事な筋肉。次々とポージングを決めてまいります。上腕二頭筋、僧帽筋、広背筋。見とれているうちにはや五つ。次で逃げるぞと身構えますが、六つ目も素晴らしい。


 七つ目が始まってしまい、逃げようとあわてますとごろーん。置きっぱなしのプロテインシェイカーに足を取られたのでした。びたーんと床にたたきつけられている間に七つ目、そして八つ目。


 そして一つ目に戻り、二つ目、三つ目……。


「おい、なに二周目やってんねん」

「明日はチートデイで休む」


 お後がよろしいようで。

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