大はしゃぎの代償

八咫空 朱穏

大はしゃぎの代償

 目が覚める。


 今夜はかなりよく眠れた気がする。が、体が重いような気もする。まあたまにあることだし大したことない。


 さーて、店開けたり朝飯作ったりしねぇとな。


 体を起こそうとすると――。


 「――いでぇ!」


 体の様々な場所から同時に痛みが襲ってきた。たまらず行動をあきらめて敷布団しきぶとんしずむ。


 昨日は散々動いたもんなぁ……。


 昨日会った出来事を、痛みの出ない姿勢で思い出す。


  ○  ○  ○


 昨日のこと。たまには店を開けずにどこかに遊びに行こうってことで、使い魔達と雪国に遊びに行ってきた。転移陣(テレポート装置)を使って雪国に飛んで、そこからほうきで飛行して適当な場所を探してそこで遊んできたのだ。


 雪山に到着するや否や、使い魔達の片方が大はしゃぎでどこかに走っていったし、もう片方はそれを追いかけてどこかに消えてしまった。


 主として、使い魔たちを探さなければならない。雪山に着いて最初にやることが、使い魔達を発見することになってしまった。箒に乗って探す選択肢もあるが、帰りも飛行やら転移やらで魔力を使うから代わりに体力を使うことにした。


 雪山を歩き始めたが、足が雪に埋まるから相当歩きにくい。普段のように歩いたり走ったりできないから、箒を片手にゆっくりと歩く。


 なんであいつらあんな普通に走り回れるんだよ……。


 慣れない雪に悪戦苦闘しながら、使い魔達を探す。幸いにも、そんなに遠くに入っておらず、すぐに見つけることができた。


 迷子になったら探すの大変だろ、と軽くしかったのちに3人で雪遊びに興じる。雪合戦にそり遊び。普段やらないものだから、俺も童心に帰って使い魔達と雪遊びを楽しんだ。




 雪や使い魔達と戯れているうちに日もかたむき、だいぶ疲れもたまってきたし、雪遊びにも満足した。腹が減ってきたから箒で来るときに見えた場所で釣りをしようと提案し、それは使い魔達に受け入れられた。


 凍った湖に到着すると、すぐにりの用意を始めて魚を釣った。あくまで食事のために立ち寄ったので、人数分の魚を確保できたら釣った魚を焼いて食べた。

 使い魔達は相当に疲労がたまっていたようで、食事を済ませた後にはウトウトしていた。俺もだいぶ疲れてきていたが、主として家には帰らなければならないと使命感で行動していたような気がする。まだ耐えられる寒さのうちに湖を発って転移陣のある町へと向かった。




 そして、家に帰ってきたのは夜だった。使い魔達は既に寝ていたが、眠っている時は動物姿に戻るから介抱には困らなかった。

 使い魔達を布団に寝かせると、体力・魔力とも限界に達した俺も布団に入って眠りについた。


  ○  ○  ○


 昨日やったことは、雪国に行って3人で大はしゃぎした。たったそれだけのことだ。そして現在はこの有様。体を動かそうとすると、その部位から痛みが襲ってくる。


 うーん、参ったなぁ。完全に筋肉痛だ。しかも全身と来た。まぁ、昨日それだけ楽しんだってことだな。……この代償から来る痛みはいただけねぇが、甘んじて受け入れるしかねぇか。


「…………」

 

 このまま寝ているわけにはいかない。いつもの日常を始めるために、筋肉痛に耐えながら布団から出る。


「いでで……」


 代償を払い終えるのは、何日後になるだろう?

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大はしゃぎの代償 八咫空 朱穏 @Sunon_Yatazora

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