美薬
みちのあかり
ぷよぷよ 【KAC20235】
スラムに落とされて8年。すっかり痩せてムキムキになった。
22世紀も近づいた現代、人間は仕事をAIとロボットに奪われた。ITをつかさどるわずかな技術者と投資家は贅沢な暮らしをし、8割の者はロボットにはさせられない「しょうもない」「責任を負って」「死にそうになる」通称『3S』という仕事しか与えられなくなった。AIやロボットは、「安全な」「きれいな」「芸術的な」仕事をする。
金持ちは豊かな食にありつく。糖・穀物・肉・酒。だからぷよぷよ太る。貧乏人は過酷な労働に人工ビタミンと人口プロテインしか与えられない。祭りの時の鳥の胸肉は最高の御馳走。ゆえに筋肉しかつかない。
体形でスラム出身とばれてしまう。
だから貧民はこの町から出ることが出来ない。
そんな状況を変えようと、もと薬剤師の俺は薬学の知識を総動員し、とうとうこの薬を開発した。
「筋肉を贅肉に変換する薬」
最初に一番の出資者、風俗店経営の女主人の所に持っていった。
「おや、できたのかい?」
「ああ」
「レイナ。レイナおいで」
小柄なレイナという少女が呼ばれた。小柄だが見るに堪えないスレンダーな体形。
「服を脱ぎな」
レイナは素直に裸になった。
「ひどい体形だろう? 脂肪のないスレンダーな体。これじゃあ客も満足しないさ」
風俗店には2種類ある。裕福層の娘が働く高級店。貧民が働く格安店。格安店にはスレンダーな娘しかいない。スラム全員筋肉質だから。すらっとした細身の体に少し大きめのキュッと突き出した胸。
「胸だけはあるんだから、あとは贅肉があればねえ。なんとかなるんだろう? その薬で」
彼女に薬を飲ませた。
筋肉が膨れ上がり、ぷよぷよよした脂肪に変わる。腹はシックスパックから三段腹へ。二の腕はたわみ、尻は緊張感を無くし、胸は垂れた。
巨大なスライムのような、ぷよぷよした体。
彼女も女主人も、綺麗になった彼女の体を鏡越しに褒め称えた。
美薬 みちのあかり @kuroneko-kanmidou
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