筋肉を愛でるお店がありまして
平本りこ
筋肉を愛でるお店がありまして
お題は筋肉ですね。好きです。
男性の肉体美はもちろんのこと、女性の縦線が入った腹筋とか可憐に盛り上がった上腕二頭筋とかキュッと引き締まった
もちろん一般の方々をじっくり見はしません。捕まっちゃうので。
ジムのインストラクターさんや肉体派芸能人の方々など、「見せる」ことを意図して鍛えておられる方々をありがたく眺めています。
そんな私、ちょっと変わった飲食店に行くことが趣味の友人がいます。以前、彼女たちと一緒に『筋肉居酒屋(仮名)』なるお店に行ってきましたので、今回はその時のお話をしようと思います。
肉肉しい筋肉が苦手な方はそっとブラウザバックをお願いします。
そのお店は、とある街ビルの地下にありました。店内は細長く、まさに三密です。当時は新型コロナの気配もありませんので問題なし。扉を開けると、男性マッチョ店員たち(表面積半端ない!)と、素敵なマッチョを愛でるお客さんたちの熱気でモワッとしていました。
そんな中、ほぼ
うろ覚えですが、
「いらっしゃいマッスルー!」
みたいな野太い歓迎の声と共に入店。お金を払っていざ席へ。
入店料に含まれている、とある仕組みにより、お客さんたちはマッチョから様々なサービスを受けることができます。
あまり詳しく書くとお店が特定されてしまいそうなので、ぼかして書きますが、簡単に言うと、マッチョあるあるなことをしてもらえる仕組みです。
例えば、生卵一気飲みとか、お姫様抱っことか、片手で果物を砕くとか。ひとまず、そのようなものを想像していただければと思います。推しマッチョをご指名することもできました。
もちろん、日本円で追加サービスを購入できます。推しマッチョの筋肉をよりいっそう堪能するため、課金者は続出なのでしょう。
ですが私たち、初来店客です。まだ推しマッチョはいませんし、酔いも回っていませんので、その場の空気に圧倒され萎縮し、「生卵!」とか「抱っこしてー♡」とか言えないのですよね。
最終的に、マッチョとの記念撮影という一番無難で難易度が低そうなサービスをお願いしてみました。
いやー、あそこまでマッチョに近づいたのは人生初です。筋肉が見えやすいように店員マッチョたちはみんな、上半身裸です。写真撮影のために接近すると、ぽわぽわと温かな熱の放射を感じます。筋肉が熱を生み出すとは聞きますが、これぞまさに、といった感じでした。
筋肉熱はともかくとして、記念撮影、思ったよりもレベルが高かったです。
肉の壁のように並んだマッチョに囲まれる私たち。照れます。
ですがそれよりもきついのは、店中のお客さん方の視線でした。
大体の方が生暖かい視線で見守ってくれるのですが、一人、物凄く鋭い目をした女性が……。どうやら、私の真後ろに立っているマッチョが推しらしく、嫉妬させてしまったようなのです。
ところがそこは、さすがマッチョ。女性の乙女心に気づいたらしく、目の前の客(私)を気遣いながらも、遠くの客(ファン)への目配せも忘れません。接客の真髄を見たようです。
彼らはただ単に、肉体を鍛えた分厚いお兄さんではありませんでした。精神面もマッチョな、素敵男子だったのです。
そんなこんなで、とても楽しく貴重な経験をした私たち。残念ながら、来店直後にコロナ禍到来といった事情もあり、あれきり素敵マッチョには会いに行けていません。
あれから数年経ちました。今もあるのでしょうか、あのお店。心配になり調べてみましたところ、変わらず元気に営業中の様子。少しホッとした私がおります。
さて、ここまで長々と筋肉居酒屋について語ってきたのですが、私は普段、エッセイよりも創作、特にファンタジー物を書いています。
ノンフィクションですし、ファンタジー世界ということは、どんなマッチョでも登場させられますよね。
それこそ、筋肉量が多いガチムチ種族とか、人間族だけど肉弾戦士集団とか、なんでも妄想できるわけです。
それなのに、過去一度も登場していないんですよ、マッチョキャラ。照れちゃって書けないんですね。
筋肉好きについては……数名の執筆仲間さんのコメント欄で性癖暴露してきたくらいで、近況ノートや作風的には筋肉推し要素はなかったと思います。多分きっと。
ですが今回こうしてマッチョについて語る機会があったのも、まさに運命!
これ以降、堂々と登場させることが出来るはずです。マッチョキャラを!
何かを書く時には、できる限り実物を見たり聞いたりするのが一番です。だから私、また行こうと思います。あの筋肉の聖地へ。
幸いにも本年は、新型コロナに関する扱いが変わる年。筋肉ファンのみなさん、ネット情報によると、全国各地に様々なマッチョのお店がある様子ですよ。ぜひともお近くのマッチョに会いに行ってくださいね。感染対策はもちろん忘れずに!
《ありがとうございマッスル》
筋肉を愛でるお店がありまして 平本りこ @hiraruko
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