忍び寄る漆黒の獣。
白鴉2式
闇の中の漆黒の獣
気配を感じる!
ここにいる。間違いない。
長年の経験故に確かな感覚が、その存在を確信する!
深夜の散歩に起きた、突然の事態。
不意に暗闇から俺の前に飛び出してきた黒いシルエット。
やはり居たか…漆黒の獣!
俺が一歩進む。
奴に警戒しながら、また一歩、一歩と近づいてゆく。
しかし奴は素早い動きで、俺から距離を取る!
すぐに目で追うも、見失ってしまった...
奴は機敏なだけではない。
漆黒の身体は闇夜にすぐに溶け込んでしまう。
厄介な相手だ。
それからも、何度も俺の前に現れては、
闇夜に姿を消す行動を繰り返す漆黒の獣。
...こいつ!
逃げ回っているのは、俺を警戒しているからじゃない。
奴は、俺を手玉に取って、遊んでやがる!
しかし...今の状況では、俺にはどうすることもできそうにない。
圧倒的身体能力差が明白過ぎるのだ。
やはり無策では手も足も出ないか...
俺はこの場から一端離れることに決めた。
それは、ある場所へと向かうために。
向かった場所で目的を済ませ出てきた俺は、
すぐ側の公園へと移動する。
そう...俺は奴から離れた場所へは戻らなかった。
何故なら、そんな必要がないからだ。
俺は公園のすみの方で立ち止まる。
...やはりな。
気配を感じる。
奴は今までずっと、俺の後をついてきていたようだ。
俺に近かず、しかし決して離れずに...
俺は先程の場所で入手した物の中から小さな袋を出す。
梱包されたその袋の封を開ける。
そして、それを頭上高く掲げると、
高らかと..
いや、周辺の住民の迷惑にならないように、それなりの声で...
商品名を言い放つ!
「ちゅ~○!」
そう!俺はとある場所...コンビニに行くと、
特定の獣が誘惑に完堕ちし、欲望のままに舐め喰らう、
最強のペットフードを買ってきたのだ!
見ろ!
案の定、闇の中から奴が姿を出して、一目散に俺の元に駆け寄ってきた!
俺の元に来た奴は、俺の足にすがりつき、
何度も何度も前足で甘えるように俺の足を掻いた。
俺はしゃがみ、そのに手にした「ちゅ~○」を差し出すと、
漆黒の獣…黒ネコは夢中になって舐め始めた。
「まったく、お前は、これにはホントまっしぐらだな」
呆れながら、黒ネコ、俺の飼い猫の頭を撫でる。
妻から「窓を開けたらミヤが出ていっちゃった!」なんて電話が掛かってきた時は、どうしたものかと思ったよ。
黒い毛並みのお前を、
こんな夜更けに見つけられるかどうかってな。
しかしペット食品界最強のフード「ちゅ~○」だ。
効果はてきめんだなっ。
やれやれ。
とんだ深夜の散歩になったよ。なあ、ミヤ?
忍び寄る漆黒の獣。 白鴉2式 @hacua
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