のらりくらりと愚痴こぼす。


 理不尽に押し付けられる仕事をし、行きたくもない飲み会に向かい、ぼったくりのような値段のタクシーに揺られている。
 真面目に堅実に働いているのに、家族からは白眼視。

 今日もまた俺は愚痴をこぼす。
 どうして自分には不幸しか巡ってこないのだろうか……

 これは中年のおっさんの主観的な心情と、第三者の客観的な分析を通じた、社会派物語である。



 あなたは今の自分の性格や外見、環境、対人関係について、どのくらい長所や短所を挙げられるでしょうか。
 あなたは自分自身の立ち位置をきちんと把握出来ているでしょうか。

 自分のことを「被害者」と思い、他者を羨望し、自覚も無く迷惑をかける。
 元来の性格なのか、誰かの影響を受けたのか、処世術として生み出したのか。
 おっさんはのらりくらりと自己弁護と他者批判を繰り返します。

 私には、このおっさんを笑うことも、糾弾することも出来ませんでした。
 この人間らしいダーティさは、誰しもが持っているものだろうと思ったためです。
 このおっさんは、おばさんにもなるし、おにいさんでもおねえさんにもなる。

 長所にしろ短所にしろ、どこまでが自分のもので、どこからが周りのものなのか。
 そういったことを考えさせてくれる一作でした。