エピローグ
『今朝、ぐーてんダーク事務所社長邸宅に、威力妨害容疑及び青少年保護条例違反の疑いで、家宅捜査が入りました……』
ネットでスキャンダルがばら撒かれてから5日後の休日の朝。
朝食を食べつつテレビをつけると、そんなニュースが流れてきた。
どうやら、ばら撒かれたスキャンダルの中には法律的にアウトなものもあったらしい。
「ひとまずの勝利……なのかな?」
「……どうだろうな」
この騒動のせいで、間違いなくVtuber業界はかなりの打撃を受けた。
大量の引退。芸能界との対立。おそらく、芸能界と深く結びつくテレビへと進出することも難しくなっただろう。
スキャンダルをばら撒かれた芸能人のファンの中には、Vtuberを深く恨んでいる人もいるはずだ。
今まさに高く飛ぼうとしていたVtuber業界にとっては、一気に下降気流に巻き込まれてしまったようなものである。
「それでも、生き残ったVtuberは軒並みかなり数字を伸ばしたよ。……私たちの収入も、凄まじい数字をしてるし」
「へー、いくら?」
俺はひょんな興味から聞いた。
「400万」
「よんひゃ……」
「公式チャンネルだけじゃなく、切り抜きとかの数字もあるからね。あとは、会議に動員されてたとき、もちろんギャラがちゃんと出てるからその分かな」
……にしてもすごい数字だ。
「まだまだ伸びると思うよ。愛ならね」
「それは良いんだが……そろそろ、夏休みだろ?」
なんだかんだ、騒動でこちゃこちゃやっているうちに6月末である。
「…………?それがどうかしたの?」
可愛く首を傾げる佳奈。
……その様子だと、完全に忘れていそう……というより、記憶から抹消していそうだ。
「もうすぐ期末テストだが、勉強しているか?」
「…………う!」
佳奈は心臓を撃ち抜かれたような声を出す。
「たしかに、忙しかったのはわかるけど」
「テスト、テスト……」
佳奈が虚な目になってそう呟く。ちょっと怖いのでやめてほしい。
「赤点取ると、補修が夏休みに入るらしい……から、勉強しないとな。ちょうどひと段落ついたところだし、一週間ほど配信を休んで勉強しようか」
一週間も休むのは忍びないが……夏休み一回も配信できなくなるよりはマシだろう。
俺も実は配信にかまけて勉強してないので、結構やばいのだ。
それに、メンタルリセットの意味合いもある。
「うー、勉強したくない……」
そう言って駄々をこねる佳奈。まるで大きい子供のようだ。
「っていうか、佳奈は大学行かないのか?」
「…………じゅけん」
受験をしたくないらしい。
「佳奈とキャンパスライフ……とか、結構期待してたりするんだが」
「……私、20までには1人欲しいなーって思ってたんだけど」
「なんて?」
さらっと恐ろしい計画が聞こえてきた。
「それに、いざという時の就職先も二つ確保してあるし」
「……二つ?」
こいつ、マスターライブからもちゃっかりいつでも来ていいよ宣言を貰ったらしい。
「うーん……」
まあ、ならいいのか?
なんだかんだあの二つの事務所はこれから続いていくと思うし……
「それに、大学なんて行ってたら子育ての時間なくなるでしょ?」
やっぱり1人目っていうのはそういう意味だったらしい。
「……まあ俺たちの家族計画はともかくとして……夏休みのうちに、ご両親に挨拶しにいかないとな」
「なあに?あなたの娘さんをくださいって?」
「ああ、もちろん」
「…………」
沈黙する佳奈。
顔を見ると、真っ赤に染まっていた。自分で言ったくせに恥ずかしくなったらしい。
「そのためにも勉強だな。さ、早速教科書から始めようか」
「うー……」
渋々といった様子で佳奈は勉強を始めた。
俺はそんな彼女を可愛く思いつつ、自分も勉強を始める。
さて、夏休みはどんなふうに過ごそうか。
––––––––
いつか続きを書くかもですが、一旦完結です。Vtuberとラブコメを混ぜたせいで、一体何を買いたら良いのかわからなくなったので。
よければ、作者の他の作品も読んでくれると嬉しいです。
狂咲世界
俺は美少女Vtuberになる! 狂咲 世界 @nedu1412
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