最終話

 魔王を倒した。

 だからと言って僕の生活が何か変わるわけではない……元より遥か昔よりアレティアはアンタッチャブルな存在だし、アレシア様は他人から忌避される存在でなおかつそんな扱いに対して何か不満を示すわけではないし、僕は落ちこぼれ扱いされていた異世界人だ。

 ちゃんとした立場を持っているララティーナはそもそも魔王討伐には向かっていない形へと本人が持って行った。


 僕たちへの対応としてはある程度の報酬を貰って後はお払い箱だ。

 不満があるかないかでいれば不満はある。

 だが……別に今の世界がそこまで不満と言うわけではない。

 元の世界は少し……僕が生きるには生きずらかったし、孤独よりの人間だった。この世界で大切な人も出来たし、その人たちと楽しく自由に生活するための立場は元から備わっている。


「ねぇ……和人」


「なんでしょう?アレシア様」


「和人は私の何だよ?他の女と仲良くする必要ないんだよ?」


「はい」


「わかっている?和人は私のことだけ見て、私のことだけを考えていればいいの」


「はい……アレシア様に仕える執事としては当然です」


「そう。和人は私の……和人も、同意したよね?」


「はい。しました」

 

 この世界はクソだ。

 衛生状況も最悪だし、ゲームはもちろん様々な娯楽がないし、飯も微妙。命の危険だってある。魔王とか、魔族とかではなく普通に病気で死ぬ可能性がこの世界だとあまりにも高すぎる。

 便利で命の危険もなく何でもそろっていた地球の方がこの世界よりも遥かに優れているだろう。

 なんやかんやで日本は住みやすい国であった。


「……ちゃんと聞いている?」


「もちろん。聞いていますよ……あっ、ララティーナが突然訪問してきましたね。気配を感じ取りました」


「……ねぇ、聞いていた?貴方は私の。わかるまで閉じ込める?」


「それは勘弁願いたいですね」

 

 それでも大切な人がいるこの世界が僕は好きだった。

 僕はきっと、これからもこの世界でアレシア様たちと一緒に過ごしていくだろう────いつまでも。

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悪役令嬢の執事となった僕はゲームの世界へと勇者として召喚された最強格のスキルを手にした同級生たちと違ってスキルを持たない落ちこぼれ勇者様! リヒト @ninnjyasuraimu

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