第41話

 心臓を棒で貫かれた僕。


「かふッ」

 

 僕は血を口よりあふれ出しながらも、魔王から逃れようと強引に後ろへと下がる。


「……んぐっ」

 

 心臓を貫かれて無事な人間なんていない。 

 激痛が走り、自分の『命』が零れ落ちていくのを明確に感じ取りながら僕は地面を転がって無様を晒しながら


「ぬぅー!かなりの力を消耗するが……我は一度、どんな致命傷からも復活出来るのだよ」


 ……不味った。

 あのゲームは魔王を倒しきれなかったアレティアが作ったものだ……奥の手があっても何も不思議ではなかった。


「……んっ、はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 なんとか回復しようとポーチへと手を伸ばす……杖を。


「させぬぞ?」

 

 僕が空間遮断で作り出した結界を早々に打ち破った魔王が僕との距離を詰めるべき足を踏み出す───まっずッ!?


「忘れないで頂戴?」

 

 僕が死を覚悟したとき、魔王と僕の間にアレティアが入りこむ。


「私には繊細なリズムなんてないからどんどん援護頂戴!」


「貴様ッ!既に衰える貴様が今更──ッ!!!神聖なる決闘を邪魔するでないッ!」


「……はは」

 

 僕はアレティアたちが作り出してくれた時間を使って幽玄ノ宝杖を取り出し、スキル『生命ノ祖』を発動する。

 膨大な魔力の代わりにありとあらゆる傷を治す破格の力を。


「ぬぅ──ッ!」

 

 魔王は膨大な魔力の濁流でもってアレティアを呑み込み、押し流しながら空へと浮かび上がる。


「邪魔者どもを一瞬で──ッ!」


「僕を忘れるなよ」


「……はっ!?」

 

 回復し、精霊ノ天弓を構える僕は矢を魔王に向かって引く。


「……かふっ」

 

 必中。

 スキル『壱戟必殺』の効果によって必ず相手に当たるようになったその矢はなんとか防ごうと構えた魔王の持つ黒い棒を避けて魔王の心臓を貫く。


「……はぁ……はぁ……はぁ。ぐっ!」

 

「僕はお前の事情になんて興味もないし、詮索するつもりはない」


「ま、待てッ!神聖なる決闘がけがッ!?」


「これは決闘じゃなくて殺し合い……仲間の有無が勝敗を分けたね」

 

 僕に心臓を貫かれ、地面へと堕ちた向かって魔王に今度こそその肉片を一つも残さぬよう圧倒的な神聖魔力を込めて魔剣を振り下ろし、塵一つ残さず消し飛ばす。


「魔王、討伐完了」

 

 魔剣を肩にかついだ僕は満足に頷きながら呟いた。

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