第40話

 僕と魔王が魔王城の玄関で共に踊り、魔剣と棒をぶつけ合う。


「『山羊ノ花弁』」

 

 魔王の魔力放射攻撃に対して僕は虚無の胃袋と言う名のポーチから盾を取り出してスキルを発動し、防ぎきる。


「『終焉砲火』」

 

 盾の次は散弾銃。

 だいぶこの時代に合わない武器を構えた僕は遠距離攻撃を魔王へとぶっぱなす。


「……ぬんッ!」

 

 そんな僕の一撃を棒切れで弾ききった魔王へと僕は距離を詰めて接近戦へと持ち込む。

 息をつく間もない怒涛の連撃で魔王を追い詰め続ける。

 接近戦であれば……僕の方が上。

 何とか距離を取ろうとする魔王を逃がさぬように僕が攻め立てていた時、魔王の背後を衝撃が襲う。


「……ッ」

 

 予想だにしていなかったわずかな魔王の体の揺れに自身のペースを崩された僕は一旦、連撃を止めて一度距離を取る。


「下らぬ茶々入れをするでないッ!貴様のような雑魚が入りこむ場ではないわッ!貴様の無遠慮な茶々入れがそこの勇者のペースを乱すッ!神聖なる決闘に余人が介入するでないッ!」


「……えっ、あ。ごめん」


「……大丈夫ですよ」

 

 僕はさっきの爆発の原因であるララティーナの言葉に対して一言だけを返してポーチから禁断ノ刻銃を取り出し、それを使いこなしながら再び魔王との距離を詰めようと苦心する。


「足を取れ」

 

「……ぬっ」

 

 魔王との距離を詰めるのに苦心していた僕はここぞというタイミングで影を操作して、魔王の足を絡めとる。


「これで決めるぞ」

 

 スキル『空間支配』の力の一つである転移を用いて魔王の背後へと回って奇襲を仕掛けた僕は自身の攻勢を更に強めていく。


「……おぉ!」

 

 影の支配、空間転移、空間遮断、空間支配……運命を切り開く者の効果である運の補正。

 自分の持つありとあらゆるスキル、手段を惜しみなく開示して魔王を畳みかけていく。


「……おぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 魔王に反撃の芽など与えない。

 ありとあらゆる対応に対して予めに対応し、淡々と魔王を追い詰め続ける。

 一度、僕のペースに引きずり込まれた魔王は僕のペースから逃れることが出来ない……接近戦の技量は僕であり、退路は空間遮断で断ち、影で動きを阻害し続ける。

 対して僕は魔王の持つ手札をゲームで予め知っているのだ。

 負ける方がおかしいだろう。


「さようなら」

 

 とうとう魔王を詰め切り、致命的な隙を晒させた魔王の首へと僕は魔剣を滑らせ、首を飛ばした。


「……詰めの甘さが出たな?」


「えっ?」

 

 床に転がった魔王の首が言葉を発し、思考の頂点である頭がなくなったはずの体が動き出し、魔王の手にある棒が僕の心臓を貫いた。

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