第39話
玉座でどん!と待つのではなく玄関で僕たちを出迎える魔王様。
「内装は我が長年の眠りによって大きく変わり、我の納得行くインテリアとなっているところがまだ玄関しかない故に……ここを一時的な我が玉座とする」
「……え?」
魔王のそんな言葉に思わず僕は困惑の声を漏らす。
「しょうがないであろう?だが、ここでも十分な広さを持っておろう。戦うの申し分ない」
「いや……まぁ、そうだけどね?」
玄関と言えども魔王城の玄関は馬鹿広い。
ここであれば問題なく戦えるだろう。
「であろう?くだらぬ前口上などいらぬ。我が求めるのは純粋な闘争だ……のぅ。異世界人。随分と強いなったではないか。我と心行くまで戦おうではないか!」
魔王は一瞬で戦闘モードへと切り替わり……それにつられて僕も戦闘モードへと切り替えられる。
「援護のほどよろしくお願いします」
僕は魔剣を持って地面を蹴り、一瞬で魔法へと斬りかかる。
「くはっ!良いぞ!かつての我が剣を完全なるわがものとするか!あの醜悪な施設に囚われ、錆びついた……その剣を預けたかつての友を思い出すわ!くわっはっはっはっは!まさかこの世界でない異世界人が我が望んだものとなるとは!だが、それも当然か!そもそもの話として我が……あのような真似をした人間と同種の存在を受け入れるなど不可避だったのだ!」
僕の剣をいつの間に握っていた一振りの棒ではじき返し、そのまま怒涛に攻め立ててくる魔王。
「……?」
それらの連撃を弾きながら……阿保みたいにテンションが高い魔王に首をかしげる。
「はっはっは!我がかつての感傷、我が長年の願望になど汝が耳を傾ける必要などないとも!汝はその……誰にも理解されることなき苦悩と努力が込められた剣を振り、ただ我を脅かせ続けばいいのだ」
「……あの時とテンションが違いすぎだろ」
「それもしょうがないだろう?あの時の下らぬ脅威になるかもしれなかった凡夫がいつの間にか我が求める勇者となっていたのだから……いや、あの時にも片理はあったのか。アレティアの執念も馬鹿に出来ぬな」
「……マジで何を言いたいのかわからん」
激しい剣と棒のぶつけ合いを続けながら上機嫌に話し続ける魔王を前に僕は困惑しながら……戦う。
「……っと」
魔王の棒を弾き、その首元を狙って突きつける僕の剣……それを魔王はバックステップで避ける。
「ふぅむ。テンションとは恐ろしいな。前口上はいらぬなど告げたが、我が好きのように前口上を話してしまっている……これではいかんな。これ以上は喋らぬようにしよう……では、『人が超えられる最大の壁』となっている我を脅かすが良い。そのまま殺しても構わんぞ?」
……訳が分からんが、この疑問を僕が解消する必要もないか。
「昔の人間の闇なんて僕が気にしてもしょうがない……僕は課せられた命令通りにあんたを殺すよ」
「……あんなちぐはぐな我が独り言でもなんとなくの事情は察せられるのか……」
僕は頭の中から様々な疑問をたたき出し、真っ直ぐに魔王と向き合って剣を構えた。
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