深夜の散歩で見つけたもの
真坂 ゆうき
見つけたものは
「あちゃー……終電に乗り遅れちまったか。まあいい、どうせあと一駅分だし最近運動不足気味だから、歩いて帰るとするか」
俺はとある証券会社に勤めている社会人なり立ての24歳、独身だ。
今日も今日とて会社では先輩に嫌味や小言を言われ、何故か押し付けられた残業の山をやっとの思いで片づけて、電車に乗ろうと駅まで走ったのだが、無情にも最後の電車が線路を駆け抜けていくのをこの目で見てしまった訳だ。と言っても、俺が今住んでいる家までは幸い徒歩で片道30分くらいの距離だし、道は灯りが無くて真っ暗闇という事も無い。無論俺はスーツ姿なので不審者に間違われることもまあないだろう。ということで、たまには夜中の散歩も良かろうよ、と俺は途中で見かけたコンビニで買った缶コーヒーを手に持ちながら、川沿いの土手を歩いていた。
ところが、俺は見てしまったのだ。
……何やら河川敷のあたりで不気味に蠢いている黒い影を。
俺は思わず足を止めてしまった。一体何をしているのか凝視していると、地面に屈みこんだそれは、何やら土を掘り起こしているようにも見える。
(おい! まさかこれ……誰かが〇体を埋めようとしているんじゃ……!)
そう思った瞬間、俺の全身に得体の知れない寒気が這い寄ってきた。ヤバいヤバいヤバい、これは俺の姿を見られたら間違いなく一緒に埋められてしまう。何とか逃げなくては……!
だが、ビビりの俺は愚かにも、手に持ったコーヒーの缶を落としてしまったのだ。カーン! と無情にも澄み渡った音が夜の澄み切った空気を震わせた。
「…………誰!?」
甲高い声が響く。間違いなく俺の人生はここで終わったと思った。
「……まさかそいつが夜中にタイムカプセルを掘り起こしてるなんて思うかよ。しかも女。どう転んでも普通は不審者にしか思えないっての」
「ひっどーい。でも優しいよね、警察に突き出すんじゃなくて私の作業手伝ってくれるなんてさ」
「でも結局見つからなかったんだろ。残念だったな」
「まーねー。でも、手紙とかおもちゃとか全部なくなっちゃったけど、手紙になんて書いてたかはぼんやり覚えてるよ。聞かせてあげよっか?」
「いーや、別に良いよ。人の秘密を聞くのも悪いからな」
「そこは『教えて下さいお願いします』って言っときなよ!」
「いて、イテテ叩くなっての。分かりましたお願いします教えて下さい」
「ふっふーん。なら特別に教えてあげよう。手紙には、こう書いてたんだ……」
『……20ねんごのわたしへ。いいおとこを見つけてけっこんしてますか』
深夜の散歩で見つけたもの 真坂 ゆうき @yki_lily
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