KAC20234 深夜のおさんぽ
日々菜 夕
深夜のおさんぽ
私の飼い主である、おじいさんとおばあさんが寝静まってから少し経った頃――
たまには散歩でもしようと思い家を抜け出した。
家の裏口に、私専用の出入り口があるから基本的に出入りは自由な身だったりする。
空には、まぁるいお月様がキラキラとしていた。
例え深夜でも春の陽気は、心地よい。
気分がいいから、今日は近くの公園まで行くことにしようと決めてジャンプ。
塀の上に飛び乗ると、ゆっくり歩み始める。
人の気配もないし、車の音も聞こえない。
でも、他の猫達の気配だけはちらほら感じる。
どうやら今日は、相手を求めてさまよっているようだ。
うらやましい。
私も子供が産める身体だったらきっと彼らに混じって相手を求めていたことだろう……
でも、それは叶わない。
なんでも人の言うには、私達に子供を産ませないのが私達のためらしいからだ。
とても不思議な話である。
私みたいな猫には理解不能な話である。
おじいさんもおばあさんも、ひ孫の顔が見れるかもしれないと言って喜んでいるのに……
なぜ私は、ダメなのだろう?
考えても分からないから普段は考えないのに……
甘い声で鳴く野良猫を見るとうらやましいと思ってしまう。
もっとも、野良猫達に言わせれば、私のように安心して寝食できる場所がある方がよっぽど幸せだと言われた。
公園に着くと人の気配がする。
危険な人かもしれないので、物陰からこっそりと覗き見ると!
一人じゃなくて二人がくっついていた。
見たことのない男女が抱きしめあって口づけをかわしているみたいだ。
うらやましい。
最近遊んでくれたお兄さんも、私と良く遊んでくれるお姉さんも――
ああやって恋人関係になったりするのだろうか?
私としては、遊び相手が増えるのは嬉しいので、お兄さんには度々通って欲しいと強く思ってしまう。
はたして……
ただの猫でしかない私になにか出来ることがあるのだろうか?
何かできるといいなぁ。
おしまい
KAC20234 深夜のおさんぽ 日々菜 夕 @nekoya2021
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