今夜も~? まんたん!
ゴオルド
今夜は最終回です
「今夜も~? まーんたーん!
時刻は深夜1時をまわりました。
『真夜中まんたんパラダイス』水曜日のナビゲーター、黒島ユリカです。
ドライバーさんや受験生の皆さんの眠れない夜のおともとして始まったこのラジオですが、今夜が最終回ということでね、スタジオもちょっとシンミリした空気になっております。
ですが! 私はいつもどおり元気いっぱいに番組をお届けしたいなと思いまぁーーーす!
うるさい? 叫ぶな?
まあまあ、私が叫ぶのは毎週のことですからね。ちょっとアシスタントの小山くん、泣かないでよ、まだ早いから! 笑。
まず1曲目。
フルスイングさんからのリクエスト。
北島三郎さんで『まつり』
☆☆☆
はい、曲あけました。
いいですね、名曲はいつ聞いてもいい。
あれかな、フルスイングさんは紅白歌合戦のイメージでリクエストしてくれたのかな?
そうだよね、最期を飾るのにふさわしい感じを出そうと、そういうことだよね。ありがとう~! 小山くん、なんで泣いてるの。おじいちゃんのこと思い出しちゃったんだ? へえ、北島三郎さんと顔が似てたの。そっかあ。おじいちゃんは今どこに? 天国かあ。じゃあ逆にあれじゃんね、逆に安心っていうか。ね。ね! 泣くな小山!
え、ではね、早速おたよりを読んでいこうかなと思います。
これ、どっち、あ、こっちか。いちごっぺさんからのお便りです。
「ユリ姉、こんばんは。いま外をお散歩しながらラジオ聞いてます」
いちごっぺさん、外にいるんだね。
「こんな深夜にお散歩なんてしたことなくて、ちょっと楽しいです」
うんうん。私はよく泥酔して終電を逃してるから、夜に散歩なんてしょっちゅうだけど、そういうのがない人はね、あんまり夜に散歩しないもんね。笑。
「たしか東のほうでしたよね、うっすら見えるような気もするんですけど、まだよくわかりません」
そっかあ。まあでもね、まだ1時ですから、ちょっと早いのかも。いちごっぺさん、おたよりありがとう!
続いて、まーくんからのおたより。
「今、彼女と一緒に聞いてます」
いいね! というか羨ましい! 私も最期は彼と一緒に過ごしたかった! いないけどね、彼! ねえちょっと泣かないで小山くん、なんでそこで泣くの? え、可哀想すぎて? じゃあ小山くんが彼氏になってよ~って首を横に振る速度が速い!
「いままでいろいろあったなって話してたら彼女が泣き出してしまったんですけど、ユリ姉の明るい声を聞いて、少し気分が落ち着いたみたいです」
そっかあ。やっぱり思い出話とかするとね、こみ上げてくるものがあるよね。でも落ち着いてくれたのなら私もラジオやってて良かったなって思います。ナビゲーター冥利につきるよ。
「あと2時間、幸せに過ごせたらなって思います」
……。
あ、ごめん、黙っちゃった。いけないやつ、ナビゲーターがやったら一番だめなやつを最終回にやってしまった。
それにしてもあれだね、もうあと2時間しかないのに、ちゃんと番組を放送できているのがすごいよね。なんか海外のほうでは、もう何ヶ月も前から電気も水道もとまったりとか、そういう話も聞くけど、日本はまだ電気使えてるもんね。さっきトイレいったら水も流れたよ。ガスも使える? 自炊しないからわかんないわ。笑。
それでは本日2曲目。
くるぶしラブさんからのリクエスト。
秋川雅史さんで『千の風になって』
☆☆☆
はい、曲あけました。
風になるのかな、私たち。なりたいね、風。笑。
でも風になるとか言われるとさ、首都高をかっとばすイメージなんだよね。でっかいバイクとか乗ってさ。ヘルメットを脱ぐと、長い髪がふぁさーってなるわけ。いいでしょ。って脱いだらだめじゃん、停止してるじゃん。風になってないじゃん。そもそも免許持ってな……ん?
いまディレクターから連絡入りました。
残り時間は、あと1時間だそうです。
いま私がいるスタジオ、大きな通りに面したところにあって、前のほう、何ていうのかな、ガラス張りっていうの、そういうのなのね。
で、ずっと外が暗かったんだけど、うっすらと東のほうが明るくなってきたのが見えます。オレンジがかった白っていうのかな。朝日とはまた違って、山の向こうで火事が起きてるみたいな色ってこんな感じかな。たしか場所は太平洋のアメリカ寄りって話だっけ。日本からは見えないだろうと思ったけど、うっすらと見えるみたいだね。ああ、いよいよなんだなあ。
小山くん、どうしたの、泣いてないじゃん。なんで。これは絶対泣いてるだろなと思うタイミングではなぜか泣かない、それが小山。
え。最期までこの職場で仕事ができてよかったって……なんでそういうこと言うの。私を泣かそうとして……るよね……。もうやめてよ! ほんとさあ……。
うう……次のおたより……。サバン菜さんから。
「ユリ姉。ずっと素敵な番組を聞かせてくれてありがとう。最期もユリ姉と一緒なんだって思ったら、なにも怖くないです」
うう……。そうだね……私もみんなと一緒だから……ひっく……怖くないよ。もう何、みんなして私を泣かせようとしてない?
ひっく、えっと、空がだいぶ明るくなってきたみたいなので、これからスタジオを出て、外から放送します。
それでは3曲目。
ピザトマトさんのリクエスト。
松平健さんで『マツケンサンバ』
☆☆☆
外ですー! いま外にいます!
リスナーの方たちがスタジオの外に来てくれていたみたいで、今全部で……7人、いますね。ありがとう!
みんなどうやって来たの? え、タクシー? まだ働いている人いるんだ! びっくりだね。
これは何ですかね、日本人の性格? もうすぐ太平洋に隕石が落ちて、地球が割れるっていうときに、直前まで働くのなんで? 私も働いてるけど!
それじゃあ、これからみんなで海を目指して歩こう。どうせなら隕石見てみたいじゃんね。見られるかどうかわかんないけどさ。
出発~! いえーい!
それでは4曲目。
次が最期になるんだね。みほぽぽさんからのリクエスト。
NiziUで『Paradise』
☆☆☆
まぶしい! まだ海についてないんですけど、すごい眩しくて前が見えなくなってしまいました。
あと、そろそろ時間みたいです。
本当にね、長い間聞いてくださって、本当に本当にありがとうございました。私はこの番組をやることができて、最期もリスナーとスタッフと一緒にいられて、幸せものでした。実家のお母さんは、私の姉と、あと猫と一緒にいるよーってさっき連絡ありました。最期に話せて良かったな。小山くんもご両親に電話! した? もうしたのね、良かった。ほかのスタッフは? みんなオッケーね! よっしゃー!
ではでは!
今夜の……ナビゲー、ターは、黒島ユリカでした……っ。
ひっく、最期だし……、みんなでせーの、で叫びましょう。ね?
せーのっ
今夜も~? まーんたーん!」
<FIN>
今夜も~? まんたん! ゴオルド @hasupalen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます