-顔- 深夜の散歩で起きた出来事
わたくし
あれは20年前の事でした…
わたくしは、とある地方都市の郊外に住んでいました。
自宅のアパートから駅やコンビニへ行く時は田んぼの中の一本道を歩かないと行けませんでした。
その日は冬の新月で月明かりは無く、とても静かで暗く寒い夜でした。
わたくしは深夜の散歩がてら、コンビニへ酒と肴を買いに出かけました。
当然、田んぼの一本道を歩きます。
当時はLEDライトは普及しておらず、街灯はあったとしても暗い裸電球か蛍光灯だけでした。
わたくしは一本道の向こうに青白い光が浮かんでいるのに気がつきました。
田んぼの中で何も無い所です。
当時も懐中電灯を持ってランニングや散歩する人はいました。
でも、それだと灯りの位置は腰やお腹の高さにあります。(当時ヘッドライトはあまり普及して無かった)
青白い光はちょうど人の頭の高さにありました。
「人魂?」
わたくしは少し警戒しながら歩いて行きました。
青白い光は上下に揺れながらわたくしの方へ近づいて来ます。
ある程度距離が縮まってくると、青白い光はある形になっている事がわかりました。
それは女性の顔でした!
青白い女性の顔が空中に浮かんで、わたくしの方へ近づいていたのでした!
わたくしは恐怖で逃げ出したくなりました!
しかし、ココは田んぼの一本道です。
左右へ逃げると田んぼの中へ落ちてしまいます。
後は前に進んで一気にすれ違うか、回れ右をして家へ逃げ帰るしかありません。
落ち着いて見ると、その女性の顔は何処かで会った記憶がありました。
「もしかして…」
わたくしは考えました。
あれは昔、別れた後自殺した元恋人では…
振られた腹いせに、わたくしを呪い殺そうとしているのでは!
あれは昔、若くして病死した幼馴染では…
初恋の人だったわたくしに会う為に、黄泉の国からやって来たのでは!
あれは、遠距離恋愛をしている今の恋人では…
わたくしに会う為に、生き霊になって来たのでは!
わたくしは誰であっても逃げずに会う事に決めました。
そして、遂に誰だかわかりました!
その人は…
黒い服を着て携帯を見ながら歩いていた隣の部屋のOLさんでした!
顔が青白かったのは、携帯の画面の明かりが顔を照らしていたダケでした。
わたくしはOLさんに
「こんばんは! お疲れ様です!」
と挨拶をしました。
OLさんも
「こんばんは、これからコンビニですか?」
と返事をしてくれました。
「ええ、夜道は暗いので気をつけて帰って下さいね」
「ありがとう、それでは」
少し話をした二人は、別れてそれぞれ方向へ歩いて行きました。
とっぴんぱらりのぷう
-顔- 深夜の散歩で起きた出来事 わたくし @watakushi-bun
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