第20話 結末
私は、街の外を少し出た辺りの街道で、虎兵衛を発見する。時は深夜になろうとしていたが、月の明かりに虎兵衛は照らされていたので、私は彼だと判別する事が出来た。
「待ちなさい、虎兵衛!何も言わずにこの国を出て行くつもりなの?」
私は、このドンウ国の城と街に背を向け、無言で去って行こうとする虎兵衛を呼び止めた。
「どうして、拙者がこの国を出て行こうとするのが分かったのでござるか?皆に分からぬ様に出て来たのに」
虎兵衛は、片手で軽々と持てるくらいの荷物と刀一本だけをお供にし、旅立とうとしていたみたいだ。彼は私に声を掛けられ、後ろめたそうな顔をしている。
「今日の宴の時、貴方が浮かない顔をしてたのが、気になったの?何を考えてるんだろうか、貴方の常識というヤツを、私なりに推測してみたの」
虎兵衛は、完全に私の方に身体を向ける。すごく切なそうな顔をして、私の話を聞いている。私は彼の目を見て、話を続ける。
「貴方はきっと、この国で英雄となり、王となる事を望まないと思ったの。だから、きっと貴方はこの国を出るだろうと思って、警戒して貴方の事を見ていたのよ。やっぱり、何も言わずに出て行くし」
「さすがでござるな。拙者の常識を、推理したのでござるな」
「貴方に散々常識の話をされたからね」
私は、得意げに答える。虎兵衛は、やられたなという顔をして聞いている。
「何故、この国を去るの?理由を言いなさい。このまま黙ってサヨナラでは、私は一生分からないまま後悔するし、納得がいかない」
私は、虎兵衛の目を見る。嘘のない、彼の気持ちを知りたいから。
「拙者はエリール殿に、本当に好きな相手と結婚して貰いたいのでござるよ。この国の為に一生懸命、尽くしてきた方だから、幸せになって貰いたいのでござるよ」
虎兵衛は、真剣な目で私を見返す。
「でも、拙者がこの国に居続けるなら、拙者とエリール殿は、結婚せねばならぬ仕来たりでござろう。望まぬ相手との結婚など、言語道断でござる。エリール殿の幸せを考えれば、拙者はこの国を去るのが筋でござる。それが拙者、侍の仁義でござる」
「私が望んでないって、勝手に決め付けないでよ!」
私は、自分の気持ちを勘違いしている虎兵衛に対し、いら立ちを感じ、声を荒げてしまう。
「へ・・・」
虎兵衛は、キョトンとした顔をする。この男、賢いのか、鈍いのか本当によく分からないなと、私はモヤモヤした気持ちになる。
「貴方の事が好きなの!だから、この国にずっと居て欲しいのよ」
私は、ハッキリと気持ちを伝える。虎兵衛はしばらくの間、沈黙し固まる。
「え、えええええええ、拙者なんかの何処が良いのでござるか?拙者なんか24時間365日、エロい事をずっと考えている様な男でござるよ。意味が分からぬでござる」
虎兵衛は焦り出す。こんな彼を見るのは初めてだ。
「今まで私の出逢って来た男達は、私の容姿ばかり褒めて、私の内面を見てくれなかった。でも、貴方は違ったの。私の性格や能力を見てくれて、認めてくれた。私の本音を聞いてくれて、理解してくれた。貴方は特別な人なの。虎兵衛、貴方の気持ちを教えて。私の事をどう思ってるの?」
虎兵衛はうつむいて、静かに私の話を聞いている。そして、腰に差している刀に手を掛け、鞘から刀を抜く。しばらくの間、刃先をじっと見つめている。
「もう、この刀は戦いで血塗られてしまったでござる。こんな血塗られた刀では、女の子の服のみを斬り、イヤーン作戦は出来ぬでござる。女の子に申し訳ないでござる」
虎兵衛は、悲しそうな目をしている。
「しかし拙者、高速で手を動かし、瞬時に女の子の服を脱がす技を開発したのでござる。名付けて、高速脱がしからのイヤーン作戦でござる。エリール殿、拙者に、この技を試させて貰えるでござるか?」
虎兵衛は真剣な目をして、私に訴えてくる。
「え、いいわ・・・よ」
私は、ちょっと引き気味で答える。彼の熱意に押された様な感じだ。
「良いのでござるか?」
虎兵衛はさらに興奮して聞いて来る。私は、無言で頷く。虎兵衛は飛び上がって喜ぶ。
「拙者、この国に残るでござる。エリール殿の為に、この命懸けるでござる。エリール殿に、愛を誓うでござる」
こうして、虎兵衛はこの国に残り、私の夫となり、ドンウ国の王となった。
私は、本当に好きな相手と結婚する事が出来たのだ。
私は今、ものすごく幸せなのである・・・・。
美女が惚れるエロ侍 かたりべダンロー @kataribedanro
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