自己が曖昧な災厄の化身

名がないキャラクターが主軸なので便宜上、混沌さんとお呼びします。
混沌さんの難しさは人民に善と作用せず、もっぱら悪や災禍として作用してしまうこと。当人に善悪がなくともそうした性質で、だから混沌さんの生き様が形成されたと解釈しました。
美しい文体で語られるので読み心地は滑らか、心地よく終いまで拝読させて頂きました。

彷徨う混沌さんが行き着いた先の錆殻さん、お名前からして代表作をお持ちの主要キャラに違いない響きであったため、読了後に本作がスピンオフなのだと気づきました。
「交互に見比べる」でお話が唐突に終了するのも見事でした。二話が必ずあるよね、続きはどこに? と探りたくなる欲求を起こしてくれます。

文章が洗練されていて美しい。読書の喜びを思い出させてくれる一遍と巡り合えて嬉しく思います。とても素敵な作品でした。ありがとうございます。