【KAC20233】性癖本屋:『ぐちゃぐちゃにもどろう』
@dekai3
【KAC20233】性癖本屋:『ぐちゃぐちゃにもどろう』
人住む所に物語あり。
人育む所に書物あり。
物語と書物あれば、それ即ち本屋あり。
色 ア
々 本 リ
な 〼
メインの商用宙路から外れ、辺境惑星へ向かう寂れた宙路の途中。
資源が取れるわけでもなく、封鎖をして宙間関所を作るにも費用の回収が望めない暗礁群の岩石の一つに、わざわざ入口をホログラムで隠して断熱材と排熱機構を搭載した本屋がありました。
店名は特に書かれておらず、岩石の表面にパッと見は単なる溝にしか見えない形で上記の古代文字が彫られています。
中は途中までは岩石をくり抜いた洞窟その物ですが、途中からは明かりが入ってこない真っ暗な空間になり、その中に色とりどりのモニターやグラフが幾つも宙に浮かんで漂っている通路へと移り変わります。
床と壁の区別が付かない中、漂うモニターやグラフを頼りに黒い空間を更に奥に進むと、なにやら天井に大きな黒いもやの様な物が渦巻いている装置があり、時折そのもやの形が変わる度に輪郭から白い陽炎の様な物をはためかせています。
ここまで来ると宙に浮いているモニターやグラフは清冽されたように等間隔に離れて輪を描いて停止しており、その輪の中心には大きな二つの並行した金色のリングが浮いています。
『………』
そして、なにやら音が聞こえました。
しかし、あなたは聞き取る事が出来ません。
『ガタンバタンボンボンズッズッ』
次は直接耳に物が倒れたり引き摺る音が聞こえました。
『
まだ物が倒れたりする音は聞こえますが、次にはきちんとした言葉が聞こえました。
『あなたの頭蓋骨へ直接音波を飛ばしています。微調整が終わったので雑音はもうしない筈です』
耳に聞こえるのは機械の様に抑揚が無い女性の声。
しかし、姿はどこにも見えません。
目の前にあるのは、並行して宙に浮いている二つの大きなリングだけ。
『そしていらっしゃいませ。ブラックホール型記憶装置を有する等データセンターへようこそ。ここには宇宙の始まりから現段階までの全ての創作物が保管されているとても素晴らしい施設です』
心なしか目の前の二つのリングが キラーン と縁を輝かせた様な気がします。
『あなたの事は伺っております。カクヨムからのお客様ですね。「キーワード:ぐちゃぐちゃ」に該当するデータを閲覧させるように指示を受けています』
頭に響く女性の声は無機質ですが得意げに語ります。
まるで、ようやく自分に役割を与えられた無邪気な子供の様に。
『「キーワード:ぐちゃぐちゃ」ですと、このストーリーがよろしいでしょう』
そういった声が聞こえると、周囲に浮いていたモニターの内の一つがすうっと動き出し、二つの大きなリングの前で静止します。
モニターの中には何やら文字の様な物と絵の様な物が漂っている様に見えます。
『こちらのストーリーのタイトルは7ぐちゃぐちゃにもどろう」でして、内容は近親相姦やBLとタグを振られている兄弟の恋愛物です。宇宙の開拓に貢献した二人の科学者の話でして、天才的な頭脳を持つ双子として生まれた兄弟が仲良くどちらも科学者の道を歩むのですが、宇宙開発に携わる過程で兄が空間圧縮型転送機、弟が分解型転送装置の開発を行う事となって袂を分かち、それぞれの装置が完成して実用段階に移る前に兄弟が再開し、お互いにお互いが母親の胎内にいた頃の様に一つに戻りたいという願望の元にそれぞれの装置を作っていた事が分かり、最終的に二人揃って分解型転送機に入って肉体を分解されて二人分で再構築されて一つになった後、空間圧縮型転送機によって1cm程の血肉の結晶体の
頭の中の声は内容を全て語ってくれました。
それも、なんとなくですがとても早口で。
『あ、も、申し訳ありません。こちらのストーリーは一部社会では禁忌とされている物なので事前にあらすじで内容が説明されてしまう物でした。これでは新鮮な感情で読書は出来ませんね』
頭の中の声は心なしか悲し気で、目の前の二つのリングも心なしが両端が下に垂れ下がってうなだれている様に見えます。
『本当に申し訳ありません…今回、他の作品をご紹介する事は出来ず、また他のキーワードで他の施設でのご案内となります。また、カクヨムさんからお題が発表されましたらお越しください』
頭の中で謝罪の声が聞こえたと思った瞬間、あなたは目の前が暗くなりました。
そう、お題につきお話は一つ。
それでは、また明日。
若しくは、明後日。
お題を元に作られる性癖小説で会いましょう。
本屋とは一旦お別れ。
『またのお越しをおまちしております』
【KAC20233】性癖本屋:『ぐちゃぐちゃにもどろう』 @dekai3
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