ネコチャンが家にやってきた!

宮下明加

これあとでブラッシング大変なやーつ

 一人暮らしを始めて3年。

 長年の夢である、猫を買い始めた。

 もっさり長い毛足がキュートなサイベリアンの子猫で、端正な顔立ちに、鼻くそみたいにちょっと鼻先が黒いのがチャームポイントなキャリコのハチワレだ。

 

 ケージの扉が開くなりネコチャンは、恐る恐るフローリングに小さくて可愛い前足をぷにっとつける。キャリコ……三毛猫は元々、警戒心が強い毛色だと言われていて、彼女も慎重に辺りを見回している。

 それだけでもう可愛いというのに、みゃーみゃー言いながらもう片足を踏み出してキョロキョロと辺りを見回す様は天使以外になんと形容しようか。

 結構ビビリな子なので、部屋とわたしに慣れるまでそっとしておいてくださいとブリーダーさんに言われたが、もう我慢できない。


「……ねねね、ネコチャァァン!!」


 わたしの雄叫びにビクッと体をこわばらせた子猫をひょいと抱き上げて、わしゃわしゃわしゃと撫で回す。


 あぁ、猫。

 念願の猫。

 

 父が猫アレルギーのため、実家で猫は飼えなかった。

 だから一人暮らしを始めたら絶対に猫を飼うんだと、このアパートもペットOKの物件を選んだ


「あぁいい毛並み……! ちょっとクンカクンカしてもいいでしゅか。あぁ、いい匂い!!」


 子猫はわたしに吸われたりぐちゃぐちゃに撫で回されたりすることがすごく嫌なのだろう。ぐにゃぐにゃと身を捩ってわたしの手から抜けるなり、ぴょんと跳ねて――。

 わたしのゆるふわアレンジヘアの頭の上に。

 

「え、ちょっと待って、どこ乗ってんの!?」


 驚いて声を上げる間もなく、子猫特有の鋭い爪がわたしの髪に絡みつく。

 子猫はゆるふわに結われた髪に手や指が絡んで、わたしの頭の上でみゃおみゃお鳴きながら暴れ、わたしは髪の毛をぐちゃぐちゃにされながらも必死で子猫を掴もうと手をあげる。

 けど、わたしの髪の毛に絡んで暴れる子猫は鋭い爪を引っ込めることはない。

 

「イタタタタタ!!」


 これは子猫を掴むより、自分の髪を解いた方が賢明だ。

 わたしは後頭部で髪を括っているシュシュに手をかけると、一気に髪を解いた。するとわたしの頭から降りてきたのは、先ほどよりもさらに毛並みがグチャグチャになった子猫。

 子猫は酷い目にあったと言わんばかりにベッドの下へと潜り込むなり、わたしを睨み、シャーっと吼えた。


「ごめん、ごめんて……。ネコチャンが家にいて、嬉しくなっちゃったんだよぅ」


 わたしは子猫にぐちゃぐちゃにされた後頭部を掻くと、ベッドの下で訝しげにこちらを見据える可愛くてぐちゃぐちゃな毛並みの生き物に目を細めた。

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ネコチャンが家にやってきた! 宮下明加 @pukkyuu

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