少し不思議なタイムマシーン
壱ノ瀬和実
少し不思議なタイムマシーン
部長の河内は須藤嫌いを隠そうとしない。須藤は須藤で部下の横田をいじめているし、同僚の田中は吉川が好きらしいのだが、吉川は田中の親友の中井が好きで、俺からすると中井は嫌な奴だ。
俺は疲れていた。
仕事終わりのちょい飲みにファミレスに寄り、さほど混んでいない店内でドリンクバーのジュースを飲んでいた。酒は飲まない。時々ワインをなめる程度で、それも好んで口にしているわけではなかった。
相関図のややこしさに巻き込まれないよう中立の立場でこれまで振る舞ってきたが、どこにも肩入れしないというのも息が詰まるものだ。
会社という小さな箱の中で愛憎が入り乱れ、あちらを立てればこちらが立たぬといった具合で、何に気を使って社会人をやっているのかと嫌になる。
俺はテーブルにへたり込みながら深く溜息を吐いた。
「もうぐちゃぐちゃだよ」
「何がぐちゃぐちゃ?」
「何がってそりゃ、人間関係だよ……ん?」
目の前から声がした。ボックス席には俺一人だ。不意に答えてしまったが、俺に質問を投げかける客と同席した覚えはない。
慌てて顔を上げると、長い髪を後ろで縛った小学校高学年くらいの女の子が、テーブルを挟んで向かい側に座っていた。
「だ、誰?」
「そんなことどうでもよくない?」
「よくない。よくない目で俺が見られる。親御さんは?」
「今は、いない」
少女は神妙な顔をして言う。
「もしかして、複雑な感じ?」
「それはもうかなり」
複雑な子供に話しかけられてしまった。
よくよく見てみれば、子供にしては髪に艶がなく、服装も少し安っぽい気がする。
「……複雑そうだ」
「でしょ? 複雑なのよ」
念押しするな。切なくなる。
「で、あなたは人間関係で悩んでいるの?」
「そう、だけど」
「嫌よね人間関係のごたごたって。分かるわぁ」
妙に大人びた話し方をする子だ。
「子供に分かるかよ、大人の人間関係の面倒さなんて」
「分かるわよ。だってわたし、複雑だし」
複雑の一言で片付けられると困るが。
「でも、別に良いじゃない、大人なんだもの。子供に比べたらマシと」
「そんなわけないだろ。大人のほうが、なんて言うか、色々と汚いっていうか」
「でも逃げられるじゃない」
「え?」
「子供は辛くても逃げられない。家も、学校も、逃げ場がないの。でも大人は、自分の覚悟一つで生きる場所を変えられる。でしょう?」
「簡単に言ってくれるなよ」
「言うだけなら簡単だから言ってるの」
嫌に真っ直ぐな目でこちらを見てくる。
「……なんで俺に絡んで来たんだ。何かその、複雑な人間関係で困ってるなら、俺なんかじゃなくて、学校の先生とか、事件性があるなら警察とか、そういうところに助けを求めた方が良いんじゃないか」
「それじゃあお母さんが幸せになれない?」
「お母さん?」
色々と複雑な環境にいるのは本当なのだろうが、母親との確執というわけではないのか。
少女は、俺のテーブルに運ばれてきたフライドポテトをつまみ始めた。
「あ、俺の」
「ごめん。いつもの癖で」
「いつも他人のものをつまみ食いしてるのか」
「人は選んでるつもり」
「俺は選ばれたのか」
「っていうか、いつものことだから」
さっきからこの子は何を言っているんだ。
別にポテトを食べられたくらいでどうとも思わないが、少し心がモヤモヤしてきた。空のコップにジュースを注いで来ようと立ち上がると。
「待って」
少女は強めの口調で俺を呼び止めた。
「少し、話を聞いて欲しい」
何かを訴えかけるような真剣な眼差しは、俺が動きを止めて、座席に腰を下ろすのには十分過ぎるくらいの力強さと、心の弱さがあるように思えた。
少女は目を伏せて、意を決したように語り出す。
「信じてもらえないかも知れないけど、わたし、二十年後の未来から来たの」
立とう。ドリンクバーだ。
「待って待って。リアクションうっす。って言うか無視しないでよ」
「子供の冗談に一々付き合ってやるのもな」
「うわぁ、らしいわ。らしいリアクション。まじそういう所ある」
「らしいって何だよ。俺のこと知らないだろ」
「知ってるわよ。未来で散々会ってるんだから」
「あっそ」
「信じてない」
「信じるバカがいるか?」
「どうしたら信じてくれる?」
「じゃあ宝くじの当選番号教えてくれ。目指せ億万長者」
「逆に聞くけど、今から二十年前の宝くじの当選番号すぐ言える?」
「無理だな」
少女は頭を抱えた。
「馬鹿なのも変わらないわ」
「さっきから失礼な奴だな」
すっ、と。少女は人差し指を立てた。
「じゃあ、あなたのことを言い当ててあげる」
「ほう?」
「あなたの名前は瀬川友典、今は二十四歳かな。三人姉弟の末っ子。趣味は野球観戦で、中学までは野球部だったけど、当時の女子マネージャーに告白して振られたことがトラウマになって高校ではサッカー部に入部するも、フリースロー以外使い物にならないって理由でベンチ入り出来ずに三年間を終える」
「タイム」
俺は両手でTの字をつくる。
「タイムを認めましょう」
「何で知ってる。ほとんど話したことないぞそのエピソード」
「あなたから聞いたの。二十年後のあなたから」
信じられない。信じられないが、信じてしまいそうになるくらい衝撃的だった。俺はこの話を親友としか共有していないはずだ。その親友も今は上京して全く会っていない。この子に教えたなんてことはないだろう。
となれば、まさか。
「お前本当に、未来から来たのか」
「そう。あなたに会いにね」
俺は髪の毛を掻きむしった。頭が混乱する。
「マジかよ。マジなのかよ。未来の俺が……ちくしょう。全部事実だけど未来の俺ちょっと脚色してやがる」
「え、どこ?」
「監督には『お前はフリースローすら使い物にならない』って言われたんだよ」
「うーわちょっと見栄張ってんじゃん」
「ああああ! 未来に辱められた!」
両手で顔を隠した。頼むから見るな少女よ。過去を盛った俺を見るな! 未来の俺め! 見栄を張るな頼むから!
ここで、一つ疑問が浮かんだ。
「ちょっと待て。お前は未来で、俺とそんな話をするほどの仲なのか」
少女はこくりと頷く。
親友としか共有していないような話を、特にマネージャーに振られた話なんて未だに忘れたいくらい黒歴史なのに。
「そこまで深い関係ってことは、もしかしてお前、俺の……娘、なのか?」
「それは違うわね」
「ああ! 恥ずかしい! 何かこの間違え方恥ずかしい!」
机におでこをぶつけて紛らわしたくなるくらい恥ずかしい!
「でも、わたしはあなたがお父さんだったらよかったのに、って思ってる。そして、お母さんもそう願ってる」
「……え?」
「だから、わたしはここに来たの。お母さんの未来を、変えるために」
少女の双眼は、俺の心に覚悟の二文字を伝えていた。
信じざるを得まい。
彼女の言葉を。
未来からの声を。
「……聞こう。俺に、何を伝えに来たんだ」
乾いた喉に何かを放り込むことを放棄して、俺は少女と正面から向き合った。
少女はフライドポテトを食べた。空気を読もうという気概は恐らくないのだ。マイペース極まりない。
「まずは、この時間から十五年後、私が七歳の頃、少し不思議な時間移動装置、通称SFTが発明されたの」
「少し不思議なタイムマシーンの略?」
「正解」
「未来のセンス終わってんな」
「でも、一般人に時間移動は難しい。超高額かつ、未来を変えない程度の時間旅行は許されているけど、それも時間管理者が必ずついて回る。一般人が簡単にタイムスリップはできないの」
「じゃあ、何でお前はここに来ることが出来たんだ」
「あなたのおかげよ」
「俺の?」
何をした未来の俺。
「そのSFTを開発したのはあなたが働く会社だったから、一般人での時間移動テストの被験体として、わたしは選ばれた。というか、ちょっと不正してもらって、強引にわたしを過去に飛ばしてもらったの」
「バカな。ただの印刷メーカーだぞ」
少女は呆れたように肩を落とす。
「なんで二十年後も同じ会社に勤めていると思っているの。言ったじゃない。大人は自分で環境を変えられる。あなたは今の会社を辞めたの。その、ぐちゃぐちゃの人間関係ってやつが面倒になってね」
「えぇ……」
マジで人間関係が原因で転職したのか俺。いや、まあ確かに考え初めてはいたけども。
「そこで、あなたはわたしのお母さんとも出会った」
「おお」
恋人なんて出来たことのない俺に、まさか転職先で出会いがあるとは。
「わたしのお母さんは高卒で入社して、ある一人の男性と出会ったの」
「俺か!」
「違う。焦らないで」
今のは絶対罠じゃん。俺だと思うじゃん。
「出会ったのは、上司の宮本って人。新人研修担当だった宮本は、美人なお母さんに一目惚れしたとか何とかでお母さんに猛アタック。二人は付き合い始めた。そして数年後、お母さんと結婚して、わたしの実のお父さんになる」
「ああ、そうですか」
俺と付き合ってるわけじゃないのね……。
「あなたが転職してきたのはお母さんが宮本と結婚して少ししてからだった。その頃のお母さんは宮本の不倫に悩まされていたわ。授かり婚ってやつで、わたしがお腹の中にいた頃から遊びまくってたってわけ。そこでお母さんは、同じ部署で仲良くなった男性によく相談するようになった。それが、あなた」
「遂に登場だ」
「遅すぎるのよ、出会いが」
吐き捨てるように言って、少女は口を膨らませた。
「わたしが小学校に入ってからも、宮本が家に帰ってくることは殆どなかった。遊び呆けて、とうとうお金も入れなくなった。お母さんはわたしを育てるためにたくさん働いたわ。知らないと思うけど、わたしがいる時代、貧富の差がものすごく広がっているの。一流企業に働いていたって、女手一つで子育てするのは厳しい時代なのよ」
現在の、停滞どころか衰退の色すら見える日本の経済状況が、改善されるどころかむしろ酷くなっていることに、一社会人として絶望したことは大人の責任として言わないでおこう。
「でも、なんとか生きていけるのは、あなたがわたしたちを助けてくれているから」
「俺が?」
「お母さんに惚れてるのよ。たぶんね。お母さんが休めるようにってお弁当を買ってきてくれたり、わたしが風邪を引いたら病院に連れて行ってくれて、休みの日には遊園地にも二人で行ったわ。このちょっと安っぽい服だってあなたが買ってきてくれたの。わたしとはセンスが合わないけど、わたしはすごく気に入ってる」
失礼だな、と思う余裕は、俺にはなくて。
生々しかった。本当に未来から来たのだ。
少女の言葉は、子役が大仰に見せる演技とも、天才役者のそれとも違う。生の言葉だ。そこに真実がなければ出ない迫力があった。
俺は、黙った。
視線を逸らした。
返せる言葉が見つけられなかったのだ。
「お母さんがね、ぼそっと言ったの」
俺が顔を向けるのを待っていた。そんな感じがした。
ゆっくりと、少女の双眸に目を向ける。
赤の他人には決して見せない、単純な言葉にしてしまうならば、愛のある瞳が、そこにはあった。
「あなたと、もっと早く出会いたかった」
胸がずきんと痛む。
「新人研修でお母さんと出会った宮本は、あなたと同じ転職組だったのよ。しかも今あなたがいるこの時間、今から数ヶ月後に宮本は転職している。それがどういう意味か分かる?」
分かる。分かるとも。
「あなたが今決断すれば、新人研修で一緒になるのはあなたかも知れないってこと。あなたがお母さんと出会ってさえいれば、きっとお母さんは、きっと、あなたのことを好きになる! そうすればお母さんは幸せに……少なくとも、今より不幸にはならずに済む」
少女はテーブルを叩いた。結構な音が店内に響いたが、誰もこちらを気に留めている様子はない。振動に皿の上のフライドポテトが僅かに浮いて、着地したときにはもう、俺の目は自分の足下に向いていた。
少女の言葉は本当だ。そうに違いない。だが待て。俺に委ねられるのか。今を生きる俺に、未来で出会うまだ知らない女性の幸せまでも委ねられてしまうのか。
そんな覚悟が、俺に出来るか?
野球部の女子マネージャーに振られたショックでサッカー部に入ったような人間だぞ。俺は逃げたんだ。人間関係がぐちゃぐちゃになる前に。高校の野球部にその女子が入るって聞いただけで逃げたんだ。そんな俺に背負えるか? 背負う覚悟が、今の俺なんかに出来るのか?
――大人は逃げられる。
少女の言葉が頭の中でこだまする。
逃げることは、恥ずかしいことなのだろうか。
今ある環境が嫌になって、人に言わせれば、下らない人間関係の悩みかも知れないが、俺にとっては逃げ出すには十分過ぎる理由だ。
逃げた先に、もしも俺を必要としてくれる存在がいるとするなら、俺は、ここを逃げ出しても良いんじゃないか。
こんな俺が、いつかの未来で出会った、背負いたくなるような存在。それがこの子で、この子の母親だとするなら。
「転職、してみよう、かな」
「ほんと!?」
少女の目がぱあっと開いた。
「あ、いや。別に、お前たちの人生を変えられるかは分からないよ。でも、どうせ今の職場が嫌になってた所だし、転職のきっかけになるなら、理由としては悪くないっていうか、踏ん切るタイミングとしては良いかな、っていうか」
「それでも良いよ! それでこそって感じもする! わたしがメニュー決めないとファミレスでポテトしか頼まない人だもん。誰かの後押しがなきゃ何もできないあなただからこそ、わたしここに来たんだから」
「ああ情けない。なんか凄く情けない。どうりでポテトつまみ食い慣れてるはずだ。おれ二十年後もそうなんだ」
少女はきらっきらの笑顔を見せた。
「変わってなくて安心した。わたしがいつも会っているあなたが、昔から変わらないあなたでよかった」
小さな身体の、大きな瞳が潤んでいた。
胸元に手を当てて、時折鼻をすする。
少し、照れくさい。
「っていうか、良いのかよ未来変えて。こういうのってその、タイムパラドックスがどうとか、問題になるんじゃないのか」
「その辺は大丈夫。仮に未来が変わるようなことがあったとしても、必要最低限の改変しかされないことが実験結果で分かった、って論文が昨日発表されたから」
「お前よく発表されたばかりの論文を自信満々で振りかざせるな。それに、もし未来が変わったらお前の存在が消えちゃうとか、そういう変化ならあり得るんじゃないか? 宮本って奴と付き合わないようになったら、お前は生まれてこないだろ」
「それも大丈夫。改変に関わった本人の存在は消えない。良い感じで存在は保たれる、って昨日」
「論文で?」
「そう!」
「弱いって。胸を張るには根拠が新鮮すぎるって」
少女は、俺が買ったという安っぽいシャツの、めちゃくちゃイケてるデザインの胸ポケットから紙を取り出した。
「ペン持ってる?」
「当たり前だろ」
「未来じゃ当たり前じゃないから。この紙だって売ってるところ探すの苦労したんだから」
そう言いながら、手渡したペンで何かを書いていく。
「これ。お母さんが入る会社」
「うわ、社名ださっ!」
そりゃタイムマシーンの名前もダサくなるわけだ。とてもじゃないが未来のある会社とは思えない。
「何が何でも転職成功させてよね」
「そうか……タイムマシーン作るような会社に入れなきゃ意味ないんだもんな」
「大丈夫。この時代ではまだそこまで大きな会社じゃないし、あなたもお母さんも広報で、ほぼ顔入社だから」
「俺イケメンってこと?」
「清潔感だけはあるってこと」
「褒めてる?」
「清潔感ほど大事なものないから、まじで」
「あ、ありが、とう?」
悪い気はしないけれども。
「じゃあ、わたしそろそろ未来に帰るね。あまり長居すると改変が行き過ぎちゃうかもしれないし」
少女は立ち上がって、ポテトを二本、口に運んだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、お前のお母さんの名前は教えてもらえないのか」
「大丈夫。わたしに似て美人な人が入ってきたらすぐ分かるから!」
「えっと、だったらせめて、お前の名前だけでも」
「わたし? そうだよね。それくらい教えてもバチは当たらないよね。わたしの名前は……夏の海って書いて夏海」
「夏海」
「未来でもよろしく。その時は――」
言い終わる前に少女は、夏海は消えてしまった。
幻だったのだろうか。夏海が大声で喋っていても、周りの数少ない客はこちらを見もしなかった。俺がワイヤレスイヤホンで通話しているように見えたのかも知れない。
だが、今となってはそんなことどうだってよかった。
同僚の色恋とか、嫉妬とか、やっかみとか、そういう場所から逃げ出して、新たな一歩を踏み出すきっかけを、夏海は俺にくれたのだ。
それで良いじゃないか。
俺はポテトを一気に食べた。ドリンクバーは、コーラを一杯だけもらって、ぐびっと飲み干して店を出た。
俺は変わるのだ。
まずは、諸々準備を始めなければいけない。
前を向くために逃げるのだ。
そう思ったら、逃げることもそんなに、悪くない。
***
ITベンチャー企業、その名も、『少し不思議なカンパニー』。本当にダサい。
俺はそこで、広報として働いていた。
会社には一人、とても可愛い女性が入ってきた。
佐々原奈海。
俺は、その人に恋をしていた。
「久しぶり」
給湯室で声を掛けられた。
佐々原の声かと思ったら、そこにいたのは、見覚えのある少女だった。
「お前っ……夏海か! めっちゃおしゃれになってんな! あれ、でも、なんでまたここに」
「未来を変えてもらいに来たの」
「なんでまた」
夏海は右腕についた腕時計の様なものを二回タップし、空中に小さなディスプレイを出現させた。
「うおお未来! 未来だ! ……って、何これ」
「家族写真! あなたとお母さん、無事付き合って結婚したんだけどさ」
「マジか! あ~こんな俺にも遂に家族が……感動だ。しかも、やっぱ奈海ちゃんだ! 奈海ちゃんと結婚できたのか俺。あれ? でもだったら、まじでなんで過去に来たんだよ。望み通りの世界になったんだろ? それに、お前はちゃんと未来で生きてるんだな! よかった~」
「生きてるわよ。良い具合に改変された世界で、あなたとお母さんとの間に出来た子供としてちゃんと生きてるわよ。でもね、この写真見て」
「凄い賑やかな写真だな」
「全部兄弟」
「え。これ全部?」
今とあまり変わらないフローリングのリビングに、子供がたくさん映っている。皆笑顔だ。そして、リビングはとても散らかっていた。
「あなたとお母さん、マジで引くぐらいラブラブ過ぎて、兄弟が六人になっちゃったの! ずっとハグしてるし所構わずキスするしホント迷惑。もうこれ以上弟妹が増えたら生活できないから! まじで!」
「確かにこれは大変だ」
「だから少しラブラブするの控えて! ちょっとだけでいいから、今から少し好感度下げといて。ちょっとでいいから!」
「でも、この写真嫌じゃないなあ。賑やかなのが一番だよ」
「今だから言えるだけだから! 絶対未来で後悔するから!」
「未来の俺が後悔してるって言ったのか?」
「言ってないから来たんじゃん! まだ増えるよ! もっと家の中ぐちゃぐちゃになるよ!」
「そうかー。でも、人間関係のぐちゃぐちゃならともかく、こんな賑やかなぐちゃぐちゃなら幸せだなぁ」
「バカなのは時代変わっても一緒なんだったぁ」
「いいなぁ、大家族」
「もう! お父さんのそういうところ好きだけど!」
「え、今お父さんって言った? うわまじ感動。もう一回言って!」
「ああーー! 幸せにしてもらう相手間違えたかも!」
「幸せではあるんだ」
「超幸せだけども!」
少し不思議なタイムマシーン 壱ノ瀬和実 @nagomi-jam
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