ぐちゃぐちゃな職場

平 遊

ごめんあそばせ♪

 昨年末。

 たえの職場では、立て続けに二人が辞めた。

 もともとギリギリの人数で回していたために人が足りず、てんやわんやで迎えたピークの中、皆で必死にお互い助け合い、なんとか業務を回し続けたが、やはり一人、無理がたたって体調を崩し、年始から休職となってしまった。

 妙達は現場の窮状を何度も上司やマネージャーに訴えた。

 これまでだってずっと、訴え続けてきたのだ。

 けれども、上司もマネージャーも結局は、話を聞くだけ。


「できるだけフォローはするから」

「じゃ、あとよろしくね」


 そう言っていつだって、結局は現場の担当者に全てを丸投げするのだ。

 妙からしてみれば、彼らのフォローなど全業務の一にも満たないと思っていた。


 そしてまた、今日。

 退職したいと申し出る社員が出た。

 一応はベテランと呼ばれる社員だからだろう、その社員は妙だけにメールで退職の意志を伝えてきた。

 当たり前だ。

 こうなることは、現場を知ってさえいれば、火を見るよりも明らか。

 何故なら、今の妙の職場では、担当も業務内容さえも、引き継ぎもなにもなく、ぐちゃぐちゃな状態なのだから。

 ところが、彼らはいち担当者に過ぎない妙に言ったのだ。


「今ならまだ引き留められるかもしれないから、あなたがヒアリングして、私達に結果を教えて」


 と。

 冗談じゃないと、妙は憤慨した。

 それじゃなくても、妙は退職者の担当業務を押し付けられて手一杯だというのに。そのうえ何故、管理職の仕事までやらされなきゃならないのだろうか。


「申し訳ないですが、業務で手一杯なため、ご要望にはお応え致しかねます」


 そうメールを返すと、妙はさっさと残業を切り上げ、スマホで転職サイトに登録をした。


 業務もぐちゃぐちゃなら、役割分担すらぐちゃぐちゃ。


 こんな職場になんか、これ以上いられるかっ!


 登録したばかりの転職サイトから、早速オファーの連絡を受信し、妙はニンマリと笑みを浮かべた。

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ぐちゃぐちゃな職場 平 遊 @taira_yuu

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