スクランブルエッグ

柊 撫子

卵ニつでできること

 休日の朝。

体は勝手に平日と同じ時間に起きてしまった。

二度寝をするには頭が冴えている。仕方がないから起きてしまおう。

 のそりと起き上がって台所へ向かい、冷蔵庫を開ける。

中をぐるりと見渡し、ふと顔の横で目が留まった。

そこには卵が六つ、備え付けのポケットに収まっている。

これだけあれば多少使っても問題ない。

なんせ気楽な一人暮らしだ、咎める者も理由もない。


よし、スクランブルエッグを作ろう。


 冷蔵庫から卵を二つ取り出し、調理台に出した深めの器に入れておく。

 ふとある食材を思い出し、冷蔵庫を再び開ける。

……やはりあった。賞味期限が今日のウインナーが三本。これも一緒に焼いてしまおう。

ついでだから調理に取り掛かる前に食パンを二枚焼いておこう。

 さて、深めの器に卵を二つ割り入れ、砂糖を小さじ二杯と塩を一つまみ、醤油を小さじ一杯半ほど入れる。

そうして卵を空気を含ませるように溶く。

 卵白がほぼ混ざった頃合いで、コンロにフライパンを置き油を入れて中火にかける。

 それから溶き卵にウインナーを千切って放り込み混ぜる。

朝から包丁を使うのは面倒だ、見栄えなんて知ったことではない。

千切ったら熱したフライパンへ全て流し込む。

 じゅわじゅわと音を立てる溶き卵を、焼き固まってきた外側から内側へかけて混ぜるように崩す。

次第に形が出来てきたところで、焦げない程度に転がし……スクランブルエッグの完成だ。

丁度食パンも焼きあがったらしい。

それぞれを皿に乗せ、食卓へ運ぶ。

インスタントコーヒーも作り、席に着く。

「いただきます」

一口食べ、卵の柔らかな甘みが口に広がる。美味い。

ほのかに香ばしいのは醤油かウインナーのお陰か。

程よく焼き目のついたウインナーも、サクサクの食パンもまた良い。

 食べる手が止まらず、あっという間に完食した。

ぬるくなったコーヒーを飲み、窓の外の天気を眺めて思い立つ。

「……洗濯するか」

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スクランブルエッグ 柊 撫子 @nadsiko

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