KAC20233🐷プギー一家の災難

オカン🐷

 お引っ越し

「パパ、どうして引っ越しせんとあかんの?」

「だからなんども言うてるやろ。うちの家族が狙われているんやて」

「でも、ぼく友だちと別れてまうのいややな」

「また戻って来られるかもしれへん。プギー、それより手を動かしてくれへんか。それはパパの仕事に必要な大事な本やから大切に扱ってくれ。ママ、それは置いて行くよ」

「えっ、これは初めて海に行ったときの思い出の品なの」

 ママはほら貝を胸元に抱きしめた。

「少しくらいならええけど、トラックに荷物が積めんようになったら置いていくんや。ママ、食器はもう詰めたのか?」

「うん、今やってる最中。それでこれ見付けて」

「早せんとトラックが来てまう。上の2人は順調にいってるんやろか」

「パパ、ぼくが見て来るよ」

 ピギーは荷物整理から解放され、2階の階段を上がって行った。

 

 しばらくして戻って来たピギー。

「あれは当分かかりそうやわ」

「何や、どないした」

 パパはずり落ちた眼鏡を押し上げながら訊いた。

「パパ、自分の目で確認してきた方がええよ」

「この忙しいのに何やってんやろ」

 パパは首に巻いたタオルで顔の汗を拭いながら階段を上がって行った。


「じゃあ、このうちの2つだけ持って行こう」

「だめー、この子も、この子もお友だちやの。置いていかれへん」

「でも、全部は無理」

「いやー」

 ピニーは自分の躰の大きさほどもある縫いぐるみたちを抱きしめて離そうとしなかった。

 ピニーは姉のプレビューの説得に応じようとしないでいるらしい。

「パパー、お姉ちゃんが意地悪言うねん」

 パパに抱きついたピニーの目から大粒の涙が溢れた。

 ピニーの涙を拭いながらパパが言った。

「お姉ちゃんは意地悪してるんやないんや。パパが頼んだんや。それやったらこうしよう。トラックに荷物が載らなかったら、そのときは置いていくんや。ええな」


「パパー、トラックが来たよー」

階下からのピギーの声でパパは焦る。



   了




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