KAC20233 面接

白川津 中々

 どうしてこうなった。

 頭を抱え地図アプリを見る。目的地はヒストリービル。名前は近くにあるが、俺の向き位置も不明。GPS機能がイカれているのだ。


 時間は13時50分。面接まで残り10分。なんとか近くにまで来たはずだがこの入り組んだ道を探せと。現在地すら覚束ぬのに。だが、やるしかない。俺は電話を取り出し面接先に電話。謝罪と要因を述べると、「15分だけ待つ」との寛大なお言葉。ありがたい。駆け巡りビルを探し。どこだ、どこだ、どこだ、ここだ。大通りにあるビルに小さくヒストリービルの文字。なんだここ! さっき通ったのに! もっと大きく書け!


 ともかく入り口に一礼し侵入。エレベーターを上り企業へ。「御用の方はこちら」と案内のある呼び出しボタンを押し待つ。待った。来た。いや、いらっしゃった!



「この度はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 誠にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! 申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」



 即座に土下座。地面に頭を打ち付け出血。構うものか。悪いのは俺だ。



「あ、あ、あ、こちら、こちらです。こちら、こちらにどうぞ〜」


「恐れ入りますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」



 パニクる受付担当と俺。全身汗まみれ血塗れで応接室へ。



「あ、あ、あ、こちら個人情報の取り扱い書です。お、お名前とご住所をごき、ご記入お願いいたしますぅ」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


 資料を受け取り記入準備。駄目だ、血を流し過ぎた。番地を忘れた。だが諦めるものか! 俺の記憶よ! 甦れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 2.5.8.4! 2-58-4だな! よし! 記入! 完了! いつでも来てくれ面接ご担当者様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 俺は準備万端だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!







 が、そんな状態で上手くいくわけなく、応対はぐちゃぐちゃ。書類に書いた番地も間違っていた。後日病院で不採用通知をいただいた俺は咽び泣き、二度と遅刻しない事を誓った。

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