ディレクターズカット版(残酷描写あり)
冬至の頃になると村のこども達がそわそわしはじめる。森丘の風物詩であるぐちゃぐちゃ馬コが迫っているからだ。
ぐちゃぐちゃ馬コはそれほどメジャーな祭ではないので知らない人も多いかもしれない。そもそも森丘村を知っている人もあまりいないだろう。
中国伝来のビャンビャン麺を和風にアレンジした森丘ビャンビャン麺が、ラーメン通には知られているかもしれない。
とはいえ、奴等は温泉に入りもせず、食べるためだけに湯河原に行くような輩なので尺度になるかどうか。
元々ぐちゃぐちゃ馬コは
現在は勿論そんなことはなく、蒼然神社と呼ばれる社に色とりどりに着飾った馬コを、兵児赤役のこども達が連れていくだけである。少子化のこの時代、ましてや限界集落と呼ばれかねないこの村で、こどもの数を減らすなどあり得ない。
しかし神事を絶やすわけにはいかない。村の年寄りが迷信深いから、ではない。戦後すぐの頃、米国かぶれの村長のとこの
春先までは何もなかった。
初夏にかかろうとする頃、村で異変が起きた。
井戸はいうに及ばず、汲み取り式の便所の暗い中をうねうねと蠢き這い回り、
臨月めいた膨らんだ腹の中を、浮き彫りのように見えたり隠れたりする無数の禿縄。女は股間に木の杭を打ち込んで火葬した。
耳から入られて頭のおかしくなった者もいた。多分脳みそを食われてしまったんだろう。半身の利かなくなる者、目の見えなくなった者、逆に禿縄を見かけるたび追って捕まえては皮も剥がずに丸呑みにするような奴までいた、とかいう話だ。
このままでは村は全滅する、と危惧した若き村長は時期外れの馬コを行った。確信があったわけではない。だが、それしか思いつかなかった。
馬コの踏み締める力で魔を祓おうとしたのだろう。痛みに喚く声、
馬コに踏まれ続けるうち、それらの音は少しずつ聞こえなくなっていき、やがて肉塊を踏みつけるぐちゃぐちゃ、ぐちゃぐちゃという音だけが響いていた。
それまでは単に馬コと呼ばれていたのが、ぐちゃぐちゃ馬コと呼ばれるようになったのはこの時以来だ。
さて。先程も言ったように
ならばどうするか?
外部から
人の命をなんだと思っているのかって。
人の命は人の命。
よその命はよその命。
自分の命を守るためや、身内の命を守るためなら仕方ないでしょや。
幸いあんたらはビャンビャン麺を食べにこんな
ビャンビャン麺は旨かったかい?
それはよかった。
いまでも
いまは怖いと思うかもしれないが、どうせ数日のうちには自分のほうからぐちゃぐちゃにしてくれと言い出すようになる。
ぼちぼち耳の奥でかさかさと音が聞こえたり、視界を横切る
今年は五人と、道というにはあまりにささやかな数だが、兵児赤役ができるこどもも十人にも満たない。そもそも馬コも少なくなったしな。
村はどうせ滅ぶ。
ぐちゃぐちゃ馬コも消えてなくなるだろう。
あとに残るのは蒼然様だけだ。
ぐちゃぐちゃ馬コ🐴 スロ男 @SSSS_Slotman
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