全てが終わった訳でもないんだし。

冴木さとし@低浮上

最終話 きっと明日はいいことあるさ。

 目の前が真っ暗になった。

 ブレーカーが落ちたのかな? 今は午後9時だ。特に何かあった訳でもないのにどうしたんだろう? 停止している洗濯機の前で動け! と念じて諦めた。携帯を確認しても、これといった事故や地震のニュースはやってないみたいだ。僕は携帯の懐中電灯のアプリを起動させた。


 携帯の光を頼りにブレーカーを見に行った。そこには既にラフな服を着た姉がいた。バスタオルで髪の毛を拭いてるようだ。


「なにかあったの?」と僕が聞くと「ドライヤー使ってたら停電しちゃったんだよね」と姉は話した。「じゃあきっとそれが原因だね。ドライヤーはもう止めてある?」と僕が聞くと姉は「うん」と答えた。


 じゃぁ、またすぐ落ちることはないかと思って、ブレーカーをバチンと上げる。家の電気は全て復活した。「今度ドライヤー使うなら他の電化製品の電源おとしてね」と僕は姉に話す。「はいはい。ありがとね~」と言って姉は部屋に戻ったようだ。


 僕たちのチームは甲子園の予選2回戦で敗退した。スポーツに力を入れてる訳でも、強豪でもない学校だから仕方ない。


 でも勝つか負けるかは時の運ともいうし、全員が本気で努力した。頑張って努力して気の合う仲間もできたんだ。だから3年間続けてよかったと僕は思うのだ。


 あらゆる誘惑を振り切ってひたすら1つのものに打ち込んだ。負けるのは仕方ない。勝つための練習はしたんだから。それでも届かないものはある。勝つか負けるかは時の運っていうし、勝ちを引き寄せるための努力はした。


 僕自身はやり切った。これ以上できないくらい頑張った。そう言い切れるだけの練習はしたんだから胸を張っていればいい。けれど高校3年間でこれだけ頑張ったのにな、と思いながら洗濯機の前に立つ。


 努力した仲間との絆でもあり、汗でぐちゃぐちゃのびっちょびちょになったユニフォームを、敗れた夢と共に僕は洗濯機に放り込んだ。



 終

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全てが終わった訳でもないんだし。 冴木さとし@低浮上 @satoshi2022

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