克美ちゃんを愛してしまう

地文が冷静かつ克美ちゃんを俯瞰で捉え、多少突き放しながら語られていくため、読者として克美ちゃんに肩入れしながら拝読させて頂きました。

恋に恋する克美ちゃんの幼稚さ純粋さが輝いていて可愛いです。愚かしさに隣接する「可愛い」は毒がありますが、この支配欲を伴う眼差しこそは司馬くんと読者が共有する感情。

中盤まで克美ちゃんの恋は脈なし、叶わなくて失恋に違いないよ…と予感していたら本作は素敵などんでん返しを贈ってくれました!それも司馬くんが実は彼女に惹かれていた……というのではなく、自分に懐く人間への嗜虐心どまりなのが素敵です。
この先でふたりの人間関係や信頼が改めて築かれるとそれはそれで素敵ですが、本作の尺や「ぐちゃぐちゃ」をテーマにした内容からして司馬くんはあくまで恋していない、でも知らぬ間にお互い深みに嵌っちゃったね、で仕上がっているのが絶妙でした。
克美ちゃん可愛い!司馬くん素敵!このふたりにはいつか恋して欲しいです。恋して別れて10年後に再会して「好きですと言われたら、天に昇るし、そのまま結婚して子供を三人作るしかない」を実現してほしくなりました。

……なりましたが、本作の時間軸が至高かもしれません。素敵な作品をありがとうございました。