あなたのための本、あります　KAC20233【ぐちゃぐちゃ】

「なんだ？ やけにご機嫌だな、てんちょ」
「ふっふっふ。わかります？ 昨日、臨時収入があったじゃないですか」
「臨時収入？ ああ、ぬいぐるみ男の『口止め料』のことか」
「そうそう」
「あっさり口止め料って認めてんじゃねーよ」
「それでね、買ったんですよ。ジャーン！ 最高級コーヒー豆〜！」
「ジャーン！ じゃねえ！ 飯を買え、飯を！」

　シミに尻を蹴られて車から追い出された店主は、渋々といった様子で歩き出した。

「何も蹴らなくたって。別に書い忘れたわけじゃなくて、最高級コーヒー豆にちょっと浮かれちゃっただけなのに…」
「聞こえてんぞ！ それを忘れたっていうんだよ！」

　ぷりぷりと店主の背中に罵声を浴びせつつも、食後のコーヒーのためにお湯を沸かし始めるシミであった。



　目印は、空色ト…続きを読む