ぬいぐるみに盗聴器を仕掛けて地下アイドルにプレゼントしてみた

汐留ライス

第2話

『ふー、おっもーい』


 イヒヒようやく家に着いたみたいだ。


 知る人ぞ知る地下アイドル、逆十字弥美さかさじゅうじやみちゃんの握手会で渡してきた大きなタヌキのぬいぐるみ。


 まさか中に盗聴器とGPSが入ってるなんて思うまい。


 プレゼントはいったんまとめて事務所に運ばれて、ここで何日か放置された。


 それでも渡した時のリアクションから、彼女が気に入ったのはわかったから、いずれ自宅に持ち帰られるって確信はあったから慌てたりしない。


 そして案の定ぬいぐるみは運ばれて、それが今日だったって次第。


『この辺でいいかな』


 部屋の中に置いてる様子。手間をかけさせてごめんね。もう住所を特定したから、何かあったら手伝ってあげるよ。


『それにしてもおっきいぬいぐるみだねー』


 しみじみとつぶやく弥美ちゃん。そりゃ特注だからね。こんなでかいのお店じゃなかなか買えないよ。


『しかしそれでこそ依代よりしろにふさわしい』


 あれ? 急に口調が変わった。


『邪悪魔神エンデレデ様、このタヌキを依代に、卑小なる物質界へ顕現けんげんし給え』


 なんか呪文みたいなのを唱え始めたよ。ていうか誰なんだ、そのなんとか魔神って。


『うむ、大儀である』


 なんか違う声が聞こえてきた。こいつがその魔神なのか。


『ああエンデレデ様、14歳の時に私の脳内に直接語りかけてくださってから今日まで、長い時間を要してしまいました』


『うむ、気にせずともよい。数年の時間など、我々にとっては誤差にすぎぬ』


 前々から弥美ちゃんは中二病を引きずったまま大人になったみたいな子だと思ってたけど、まさかキャラじゃなくてガチのやつだったとは。


『顕現なさったからには、いよいよこの物質界に侵攻なさるのですね』


『うむ。だがその前にすることがある』


『何でしょう』


『このことを知っている者がひとりいる。そいつを消しに行くぞ』


『御意』


 GPSを確認すると、ぬいぐるみがすごい速さでこっちに近づいてくるのがわかる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぬいぐるみに盗聴器を仕掛けて地下アイドルにプレゼントしてみた 汐留ライス @ejurin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ