異世界小噺 『ぬいぐるみの魔法』
宇枝一夫
みんなぁ、ぬいぐるみになぁ~れぇ~!
私の名前はリン。
ぬいぐるみの大好きな女の子。
ある時、熊さんのぬいぐるみが歩いていたから、あとをつけてみたの。
そうしたら、森の中にある、魔法使いのおばあさんの家に着いたわ。
おばあさんがおっしゃるには、ここは“チキュウ”ではない“ディファールド”って言う名前の世界だって。
どうしよう、お家に帰れなくなっちゃった。
おばあさんは
“今から魔法を授けるから、その魔法で百種類の“もんすたぁ”をぬいぐるみにしてくれれば、お家に帰してやるよ”
だって。
やったぁ! 魔法が使えるなんて夢みたい!
だけど最初はね、弱いもんすたぁしかぬいぐるみにできなかったの。
それでもぬいぐるみになるとかわいくなって、街の人によく売れて、それに、もんすたぁが減って感謝されちゃった。
こうして、“けいけんち”を積む度に、もっと強いもんすたぁもぬいぐるみにすることができたのよ。
魔法ってすごいわね。
これらのぬいぐるみは、冒険者の方々が高いお金を出して買ってくれたの。
なんでも、本物を倒す練習台にするんだけど、なかなか壊れなかったみたいね。
そんなある日、王国にドラゴンが攻めてきたの。
それもぬいぐるみにしたら、貴族様が高く買ってくれたわ。
そうしたら“あやつは最弱”って、次から次へとドラゴンが攻めてきたけど、ぬいぐるみにして、貴族様に売っちゃった!
とうとうドラゴンの王様が攻めてきたけど、魔法使いのおばあさんがおっしゃるには、アレが百種類目のもんすたぁだって!
苦戦したけど、体を少しずつぬいぐるみにして、やっと全身ぬいぐるみにしたわ!
王国中が喜んで、パレードをして、ドラゴン王のぬいぐるみは王様が買ってくれたの。
おばあさんの家に戻ると、
“このドアをくぐると元の世界へ帰れるけど、もう魔法は使えないし、ぬいぐるみも元に戻っちゃうよ”
だって。
いっぱい遊んだし、パパとママに会いたいからもういいわ。
バイバイ!
異世界小噺 『ぬいぐるみの魔法』 宇枝一夫 @kazuoueda
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