【KAC2023】ぬいぐるみ出撃!

amegahare

第1話

怪獣が出現して人類を襲うようになってから百年が経過した。

あらゆる兵器を試した結果、ぬいぐるみの毛が怪獣には効果的であることが判明した。

そこで人類の英知を結集して、汎用型ぬいぐるみロボットが創られた。

ショッピングモールの中に怪獣接近を知らせる警戒音が鳴り響いている

「また、怪獣の接近か。これじゃあ、ゆっくりとオレンジジュースも飲めないや」

汎用型ぬいぐるみロボットのパイロットである俺は、これからの出撃準備を考えて、思わず溜息を洩らした。

ブルルルッ!

俺の腕に巻かれた時計型端末に司令部からの出撃連絡が入った。

「いま、どこにいる?」

時計型端末を口元に近づけ、俺は司令部に状況を伝える。

「ショッピングモールでオレンジジュースを飲んでいます」

「休暇中に悪いが、出現の準備を頼む」

「了解しました。これから出撃準備を整えます」

休暇中であってもパイロットは容赦なく呼び出される。汎用型ぬいぐるみロボットのパイロットは常に人員不足だ。誰でも汎用型ぬいぐるみロボットを操縦できるわけではない。ぬいぐるみに対する深い愛情が必須で、なおかつぬいぐるみから認められないといけない。

「今度また代休を申請するか」

俺は独り言を呟きながら、汎用型ぬいぐるみロボットが保管されている基地へ急ぐことにした。こんなことになるんだったら、基地で過ごすんだった、と軽く後悔しつつ。

基地に到着した俺はオペレータルームに置かれているクマのぬいぐるみを抱きしめにいく。乱雑に抱きしめてしまうと、汎用型ぬいぐるみロボットは起動しなくなる。とても繊細なロボットなんだ。

このクマのぬいぐるみと汎用型ぬいぐるみロボットは神経がリンクされているとのこと。

ここで俺は重大なことに気がつく。

「今日の昼飯はニンニクましましのラーメンだった」

案の定、クマのぬいぐるみはご機嫌斜めとなり、ロボットは起動しなくなってしまった。


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