【KAC20232】『ペニスの生えたぬいぐるみ』

@dekai3

【KAC20232】性癖本屋:『ペニスの生えたぬいぐるみ』

 人住む所に物語あり。

 人育む所に書物あり。 

 物語と書物あれば、それ即ち本屋あり。






色   ア

々 本 リ

な   〼


 ギルドでさえも存在を把握しきれていない沼地を含む森林ダンジョンの奥深く。

 モンスターの脅威度は低くとも、足元を取られる沼地と常に四方が見渡せない森林が合わさる事でダンジョン指定されながらも挑む者は少なく、特に有用な素材も見付かっていない半分放置されているダンジョンの片隅にその本屋はありました。

 店名は特に書かれておらず、入り口の横に置かれた手書きの看板に上記の文字が立派な魔法文字で書かれています。


 中は大きな木をくりぬいて作られた魔女の住処という装丁で、同じように壁をくりぬいて作られた本棚で部屋中が覆われています。

 本は本棚だけではなく床にラグを敷いた上に置かれていたり、机の上に平詰みされていたり、巻物として無造作に傘立ての様な物に突っ込まれていたり、カレンダーの様に上部だけ止めて天井から吊り下げられている物と様々です。

 本の種類も様々です。魔法所は勿論の事、どこぞの国の砦の見取り図や個人が作成したモンスター分布図、古代都市の機械を動かすマニュアルなんかもあり、凡そ『本』と呼ばれるものはなんであれ詰め込んだ空間と呼ぶ方が近いのかもしれません。

 そんな本の洞の中、入り口とは反対側のひときわ本が積みあがったカウンターの奥の建物と一体化した椅子の上に、彼女は居ました。


「おや、お客様ですね。いらっしゃいませ」


 年のころは不明ですが若く見え、小柄な外見をしていますが瞳はまるで長年を生きる聖母の如く蒼くきらめき、ストレートでツヤツヤな金色の髪の毛を前髪ぱっつんともみあげの裾を揃えたお姫様カットで流し、頭には水色のリボンを付けています。服はリボンの色とおそろいの水色のエプロンドレスで、腰から下は椅子ごとスカートに隠れていて見えません。

 そして、一番目立つのは大きな眼鏡。顔の半分を覆う程の大きな丸眼鏡をかけているのが特徴です。


「よくもまあこんなところまで……と、ああ、カクヨムからのお客様ですね」


 彼女はそう言うと、眼鏡の蔓を指で押し上げながら何かをブツブツと呟きます。

 よく見ると大きな丸眼鏡は淡く緑色に光って居て、レンズの表面にはいくつもの白い文字が上から下へ流れています。


「お題はぬいぐるみ……。でしたら、そちらはどうでしょう? このような場所まで来てしまうあなたの様な方にはピッタリだと思います」


 彼女がそう言って指さしたのは、いつの間にか入り口横の木のテーブルに置かれた一冊の本。木のテーブルも本も先ほどまでは無かった物です。


「内容は短編ですので直ぐに読み終わりますよ。さあ、腰かけて」


 気が付くとテーブルの横には木の椅子も置かれており、枯草で編んだクッションも敷かれています。

 ここまで本を読むおぜん立てをされては、読まないわけにはいかないでしょう。


 本の題名は『ペニスの生えたぬいぐるみ』。可愛い挿し絵の入った絵本です。





『ペニスの生えたぬいぐるみ  作:フタナリスキー・カミンガス』



 むかしむかし、まだお月さまが青く水平だったころ、水晶と金鉱脈で煌めく山の切っ先に、とても強大な魔力を持つ悪魔のお城がありました。

 悪魔は自分の体や他人の体を付けたり外したりする事に長けていて、その術を使って五つの世界の種族のお金持ちや権力者達ととても懇意にしていました。


 悪魔のお城の地下には悪魔が集めた体のパーツがいくつも保管されている生態庫と、悪魔への貢物や悪魔が欲しいと思った物を集める宝物庫があります。

 ちょうど、地下の右側が生態庫、左側が宝物庫です。

 生態庫と宝物庫といってもそれほど細かく区別して物が置かれているわけではなく、両手の無い石像が生態庫に置かれていたり、夢食いサルの腕が宝物庫に置かれていたりと、その分類はまちまちです。

 そんな感じで結構いい加減に管理されている生態庫と宝物庫なので、お城の主の悪魔は中から何かが持ち出されていても、それがお城の中にあるのなら全く気にしていない程です。


 その為、今日も生態庫にある「ペニスの生えたぬいぐるみ」であるクマタロウは、宝物庫にある「ドレスを着たビスクドール」のアンドロと一緒に、悪魔の娘のおもちゃとして扱わています。


「今日はクマタロウがおとうさんで、私がおかあさん!! アンドロはお隣のおばさん!!」

「(また始まったか。自我があるとバレると厄介だから、今日もじっとしていなきゃ)」


 悪魔の娘はまだ幼く、滅多に自分の相手をしてくれない悪魔の代わりに、このクマタロウとアンドロを使っておままごとをしています。

 悪魔の娘は生態庫と宝物庫に自由に出入り出来る為、毎朝生態庫からクマタロウ、宝物庫からアンドロを取り出してきてはこうして一人遊びをし、夜になるとそれぞれの場所へ戻す行為を繰り返しています。

 いつもだいたいクマタロウを自分の伴侶とし、アンドロは娘だったりおばあさんだったり近くに住んで居る人だったりと、クマタロウのパートナーになる事はありません。


「ほら、あなた! お隣のアンドロさんにあいさつして!!」


 悪魔の娘はそう言うと、クマタロウを持ち上げてソファーに座らせたアンドロに覆い被せる様に押し付けます。


ギュム


「(うっ…)」


 悪魔の娘のおままごとは人類の様に何かを食べる真似をするのではなく、他者から精機を吸い取る真似をしておままごととしています。

 今も悪魔の娘はクマタロウの口をアンドロにくっ付け、挨拶がてら精気を吸う誘惑の挨拶の真似事をしています。


「(ダ、ダメだ…我慢しなきゃ…)」


 ビスクドールのアンドロはとても美しい外見をしており、その作られた精巧な美貌は悪魔の娘以上です。

 そんな美貌の持ち主と肌を触れ合わせる距離でスキンシップさせられては、クマタロウは自分の股間についているペニスを固くしてしまう事から逃れられません。

 毎回毎回我慢しなくてはと思うのですが、クマタロウの意志とは裏腹に体は反応してしまい、クマタロウは股間部分からペニスを大きく膨張させるのです。

 クマタロウのペニスがこうなるとおままごとは終わってしまい、悪魔の娘の付き人によってクマタロウは生態庫へ戻されてしまいます。

 クマタロウはまだ幼い悪魔の娘に自分のペニスを見せる事に抵抗がありますし、ましてやアンドロの様な汚れを知らない純粋な美しさを持ったビスクドールに自分の汚い部分であるペニスを見られるのは恥じらい以上に罪悪感があります。なので、こうして生態庫に戻される事に不満はありません。寧ろ毎回助かったとさえ思っています。


「(くっ、こんなものが無ければもっとアンドロと…)」


 クマタロウは醜いペニスを持つぬいぐるみの自分を軽蔑しており、ペニスが無ければアンドロと長く一緒に居れるのではないかと思っています。

 今日の様にペニスが大きくなるのを我慢できなかった日は100を超えてから数えていません。

 特に今日はアンドロとのスキンシップが過激でした。今もまだ、ペニスが大きくなったまま収まりきらない程に。


「ああ、こんなペニスなんか取れてしまえばいいのに」

「フム、それがお前の願いか」

「えっ!?」


 ふと口から漏れてしまった心の声に反応が聞こえ、クマタロウは驚きました。


「娘が毎日何かをやっているのは知っていたが、まさか自我のある物でままごとをしていたとはな。支配者の娘として喜ぶべきか、諫めるべきか…」


 声の主はこのお城の主でもある悪魔です。

 悪魔が生態庫のクマタロウの元までやってきたのです。


「あ、あのう。望めば取ってもらえるのでしょうか?」


 クマタロウは恐る恐る悪魔に話しかけます。

 悪魔がどんな悪魔かというのはクマタロウも知っていますし、願いと認めてくれたのならば叶えてくれるかもしれないという一抹の期待を込めた問いです。


「いいとも。お前のペニスを取ってやろう。それが悪魔である俺の力と役目だ」

「ほ、ほんとうですか!おねがいします!!」


 悪魔の言葉に、クマタロウは直ぐさま飛びつきました。

 クマタロウは悪魔がどんな悪魔か知っていますし、その技術が確かなのも知っています。

 悪魔ならば自分のこの体から醜い物を排除してくれるだろうと信じています。


「ただ、私は願いを叶える時はその反対の事を対価として受け取っている。今回だとそうだな……棒を抜くのだから穴を開けよう」

「あな?」

「そうだ、穴だ。ペニスを取ったところに同じだけの深さの穴を作る。それでもいいか?」


 悪魔は無償では事をしないと、クマタロウに『ペニスを取る対価としてペニスと同じだけの大きさの穴を開ける』という条件を出してきました。

 クマタロウは穴がなんの事か分かっていませんが、自分を困らせるペニスが無くなるのならばと、深く考えずに返事をします。


「大丈夫です。お願いします」

「ははは! その願い、承った!!」


 クマタロウが返事をすると、悪魔はその返事が来ることが分かっていたとばかりに直ぐに動き出し、体を大きく広げてクマタロウを包み込みます。

 クマタロウは悪魔に包み込まれるのに恐怖を覚えましたが、それでも願いが叶いのだからと我慢しました。

 そして完全に悪魔に包み込まれると、クマタロウは意識が遠のいていくのを感じました。











「今日はクマタロウがおとうさんで、私がおかあさん!! アンドロは私達のりっぱな子供よ!!」

「(えっ?)」


 クマタロウが気が付くと、そこは生体庫ではなく悪魔の娘の部屋でした。

 いつも自我の無いフリをしていたので、気を失っている事に気付かれずに運ばれたのでしょう。

 クマタロウは悪魔にお願いした事が叶っているか確認したいのですが、この距離で体を動かすのはバレてしまうのでよくありません。股間は何やらふわふわとして熱を持った状態なので、ペニスがあるのかないのかはよく分かりません。


「ほら、あなた! アンドロにごはんを食べさせてあげて!!」


 クマタロウが自分の股間を確かめる前に、いつものおままごとは始まってしまいました。

 今日はアンドロが娘役ですが、いつもやる事は変わりません。悪魔の娘はいつもの様にクマタロウを持ち上げ、ソファーに座らせたアンドロに覆い被せる様に押し付けます。



ギュム


「(うっ…)」


 美しいビスクドールであるアンドロに覆い被さり、クマタロウは自分の体でアンドロを押し潰している事と、同時に汚している事に興奮します。


「(あれっ?)」


 しかし、いつもの様に股間にある筈のペニスは大きくなりません。


「あれー? クマタロウいつもと違う?」

「(うおっ!?)」


 悪魔の娘はアンドロとクマタロウが抱き合っているのを下から覗いてはクマタロウのペニスが大きくならない事を不思議に思い、股の後ろからクマタロウの股間に手を伸ばしてまさぐります。

 クマタロウは思わず声が漏れそうになりましたが、なんとか我慢しました。


「あれれー? 無いよー?」

「(うぅ、うあぁ!)」


 幼さ故からか無邪気に股間をまさぐられ、声を出すのを必死に我慢するクマタロウ。

 先程からふわふわしている股間の熱はお腹を中心にどんどん広がっていきます。


「あ、穴があるー!?」

「(え、穴? って事は)」


 クマタロウの股間をまさぐっていた悪魔の娘は、クマタロウの股間にペニスが無く、穴が空いている事を見付けました。


「じゃあクマタロウは私と同じだね!」

「そうね、そういう事だわ」

「(えっ?)」


 悪魔の娘に股間をまさぐられる事で自分の股間からペニスが無くなっている事を確信したクマタロウでしたが、今度は別の事で驚きを隠せません。


「せっかく用意したのにねー!」

「でもいいのよ、これでも楽しめるから」

「(えっ、えっ?)」


 クマタロウの驚きの元。

 それは、ビスクドールのアンドロが喋って動いている事でした。


「あら、何を呆けた顔をしているの? あなたみたいなぬいぐるみが自我を持つなら、私の様な人形も自我を持って当たり前でしょう?」


 アンドロはそう言いながら腕を動かして自分に覆い被さっているクマタロウの肩を掴むと、ぐるりと位置を変え、クマタロウに対して馬乗りの形になります。


「まさか、あなたも悪魔に取引を持ち掛けていたなんてね。想定外だけれど余り問題は無いわ」

「も、もんだい?」


 クマタロウは自分に馬乗りになっているアンドロを見上げながら、(なんて美しいんだろう)と思います。

 股間の熱が頭まで回ったクマタロウは深く物事を考える事が出来ず、蕩けた顔でアンドロを見る事しか出来ません。


「じゃあクマタロウも最後までおままごとできるの?」

「ええ、出来るわ」

「やったー!」


 クマタロウは『おままごと』という自分にも分かる言葉が出たので、自分の意識を正常に保つ為にも疑問を挙げます。


「さい…ご?」

「そう、最後。まさか、キスしただけで悪魔の精気のやりとりが終わるなんて思って無いわよね?」

「そ、それは…」


 アンドロはそう言うと、クマタロウに馬乗りになったままドレスの裾をゆっくりと持ち上げます。

 スカートの中からは美しい白磁の足が覗き、女性らしさを現す丸みを帯びたシルエットを醸し出します。

 ビスクドールのアンドロはとても美しく、そして、焦らす様な艶めかしい動作で腰を持ち上げます。


ボロン


「えっ?」


 美しい白磁の肌のアンドロの股間にあったのは、黒く太く大きくなっているペニスでした。

 それも、クマタロウのよりも巨大です。


「な、なぜ…」


 クマタロウはアンドロを汚すまいと悪魔に頼んで取ってもらったペニスがアンドロに付いているのに混乱しています。

 しかし、頭は蕩けたまま。まともな思考は出来ません。


「ふふふ、最初から私とあなたにはこれが付いていたのよ。でも、この娘は一人で二本も相手をするのは難しいから最初からその目的で作られた私が最後まで相手をしていたの」

「アンドロとするのとっても気持ちいいもんね!」

「あ、あぁ…」


 クマタロウは気付きました。

 クマタロウはアンドロの事を汚してはいけない存在だと思っていましたが、実際はそんな事は無く、自分の思い込みでしかなかったと、


「いつもは私だけだったたから、クマタロウ楽しめる様に悪魔に頼んで私に穴を空けて貰ったの。そうすれば三人で楽しめるでしょ?」


 アンドロはそう言いながら立派なペニスに手を添え、クマタロウのお腹の上に押し付けます。


「でも、クマタロウからペニスが無くなって穴が空いたのなら、クマタロウで女の相手の練習も出来るわ。ほら、こうしただけでもうこんなに物欲しそうにしているし」


 クマタロウはアンドロが何を言っているのか分かりません。分かりませんが、蕩けた頭でもこれから楽しく気持ちいいおままごとが最後まで続くのは分かります。

 クマタロウはアンドロの立派なペニスを見ながら、こんな綺麗な存在に自分を汚して貰える事に興奮し、体の奥底にいっそう強い熱を感じるのでした。


 めでたし、めでたし。










「あら、読み終わりましたか? ふふ、面白い顔をしていますね」


 椅子に腰掛けているだろう彼女は、あなたが読み終わるのと同時に声を掛けてきました。


「とても単純な事ですが、外見だけでは相手の内面が分からない様に、服の上からは服の中は分かりませんよね」


 彼女はそう言いながら、椅子ごとスカートで隠されている下半身を撫でます。

 よく見るとその椅子は床に繋がっており、この部屋、敷いてはこの本屋がある巨木と一体化している様に見えます。


「今回はそのお話でしたが、次回はどうなる事でしょう。また、カクヨムさんからお題が発表されましたらお越しください」


 彼女の声が聞こえたと思った瞬間、あなたは目の前が暗くなりました。


そう、お題につきお話は一つ。


 それでは、また明日。

 若しくは、明後日。

 お題を元に作られる性癖小説で会いましょう。

 本屋とは一旦お別れ。


「またのお越しをおまちしております」

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