お狐様のぬいぐるみ
碧絃(aoi)
お狐様のぬいぐるみ
僕のばあちゃんの日課は、近所の小さな神社にお参りに行く事だ。
神社の中には狐の神様が
幼い頃ばあちゃんっ子だった僕は、毎日そのお参りについて行っていた。
そして小学生になった頃、狐の神様がひとりぼっちで可哀想だと思った。
———そうだ!僕のぬいぐるみをあげればいい。
白い狐のぬいぐるみは首に赤い
狐の神様も赤い前掛けをしているのでお揃いだと思い、神様の横に置いた。
「神様と仲良くしてね」と言いながら手を合わせる僕を見て、
ばあちゃんはクスクスと笑った。
「せっかく貰ったのに、神様にあげていいの?」
「いいんだよ」
僕と、ばあちゃんのお参りは小学生の間ずっと続いた。
しかし、中学生になって部活に入ると毎日忙しく、神社の事は次第に忘れて行った。
友達も増えて、部活が無い日はゲームをしたり、カラオケに行ったりと忙しい。
秋になり、僕は友達と一緒に大きな神社の祭りに行った。
露店で射的をしたり、林檎飴を食べながら祭りの雰囲気を楽しんでいると、突然笛の音が聞こえた。
「避けてください」と言われたので僕達が道を開けると、大きな
とても華やかな飾りに目を奪われていると、ちょうど目の前に来た時、男性が大きな声で叫んだ。
そして目の前が暗くなり、僕が目を
ガシャーン! と大きな音が響いた。
少し間があって、誰かに引っ張られ目を開けると、倒れた神輿が目に入った。
それともう一つ。
神輿の下敷きになった白い狐のぬいぐるみ。
首には赤い紐飾りがある。
脳裏に幼い日の記憶が蘇った。
———神様が、助けてくれたのかも知れない。
そう思った僕はぬいぐるみを綺麗にして小さな神社へ向かい、
神様の横に置いた。
すると、雲の隙間から陽がさして周辺が明るくなり、爽やかな風が吹き抜けて行った。
神様も喜んでくれている気がしたのはきっと、僕の気のせいではないと思う。
お狐様のぬいぐるみ 碧絃(aoi) @aoi-neco
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