KAC20232 「ぬいぐるみ」②
小烏 つむぎ
KAC20232 「母のぬいぐるみ」
二人は台所で母が使っていた小ぶりな茶碗を水切りカゴから取り上げた。一ヶ所小さく欠けたそれは、16年ほど前に
元気なうちの終活をしないとと、母は3年ほどかけて断捨離をしていた。娘の
「姉ちゃん、なにしてるん?」
「お母さんの最期の着物。
お母さん、自分で用意してるから。」
「幽霊とかが着てるあれのこと?」
「そうだけど、違う。
ほら、これよ。
覚えてない?」
「あ!中学の卒業式のときオカンが着てたやつ!」
「あんたあの時やけに母さんにつっかかってたよね。」
「オカンだけ着物で…いたたまれんかった。
……違う。
ホンマはめちゃ、キレイかった。
ダチに『おまんとこのオカン、キレイやん』って言われて……照れくさかったんだ。」
「お年頃やったもんな。
あんたはサッカーやるって県外の高校に進学が決まってたし、お母さん、気合い入ってたわ。」
鼻をすすりながらティッシュペーパーを探しに立ち上った
「なに?」
尋ねる
「あ、これ!
洋子おばさんがくれたやつ!
「うん、オカンに何回も見せられた。」
のんびりの昼寝でもしているかのような丸い顔の、ほどよく握れる太さの胴体に短いとってつけたような手足がついたぬいぐるみ。そのぬいぐるみは手作りのユニホームを着ていた。ユニホームの背中には怪我をしてプロを辞めるまで、
「オカン、縫い目ガタガタやんか。」
「お母さん、縫い物得意じゃなかったもんねぇ。」
二人の声に嗚咽が混じる。
玄関の下駄箱の上では、
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近況ノートに、モデルのぬいぐるみの写真を載せました
https://kakuyomu.jp/users/9875hh564/news/16817330654054745883
KAC20232 「ぬいぐるみ」② 小烏 つむぎ @9875hh564
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