G3・ぬいぐるみ3巨頭会談

紫陽_凛

夜の3巨頭会談

 三姉弟さんきょうだい寝静ねしずまると、ぬいぐるみの三匹はうずうずし始めます。一番早いのはウサ子。末っ子のハナちゃんのぬいぐるみです。けれど、時間が来るまで、がまん、がまん。

 二番目はリンちゃんのブウ子ですが、ブウ子はぬいぐるみ以上になので、リンちゃんの頭の下にしかれて苦しそうです。三番目に動き出すブヒはあまえんぼうなので、ヒロ君のうでの中から名残なごりしそうに出てきます。

 さて、今日も始まります。三巨頭会談さんきょとうかいだん、G3。だけど、だれも「G」の意味を分かっていないのです。グレート、でしょうか。

「今日の議題ぎだいは、われわれのあつかいについてウサ」

 仕切しきるのはウサ子です。両耳がぎゅっとヘアゴムでしばられています。

「さいきん、みんなのぬいぐるみの扱いがウサ」

「ぼくもそうおもうブヒ」ブヒも、短い足をぱたぱたさせました。「耳が、とれちゃったブヒ」

「それはそれで味があっていいと思うブコ」三段さんだんベッドの一番上から、ブウ子が言いました。「片耳かたみみとれて、いいおとこになったブコ」

「そうかなあ」

 ブヒは首をかしげました。い糸が取れてしまった右耳がぷらんとしています。

「ウサウサ。ウサ子の扱いがいちばんざつ、ウサ!」

 ウサ子がぶんぶんと頭を振りました。ヘアゴムのかざりの中で、ビーズがころころれました。

「ウサ子、いつもやられ役ウサ」

「それは仕方ない」

「仕方ないブコ」

 ウサ子がそうなのは、姉弟きょうだいかんの力関係がはたらいているので、どうしようもありません。ヒロ君はいつも、ブヒでウサ子をやっつけようとするのです。

「ぼくらにはどうしようもないブヒ」

「そんなのあんまりウサ!」


 ウサ子の声がひびいたからでしょうか。

三段ベッドの一番下で眠っていたハナちゃんが起き出しました。

「うーん、ママ……」

 G3はかちん、と固まりました。ブヒはぱたりとたおれ、ブウ子は枕になり、ウサ子はあわあわとそのままポーズ。

 どうやら三巨頭会議さんきょとうかいぎはこれにて閉幕へいまくのようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

G3・ぬいぐるみ3巨頭会談 紫陽_凛 @syw_rin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ