ぬいぐるみの条件
水円 岳
☆
ぬいぐるみとはそもそもなんぞや。条件1=縫って、条件2=
ふむ。と、なれば。条件1は自ずと満たされていると考えてよかろう。問題は条件2の方だな。何を包んであってもかまわないが、少なくとも『何かが』包まれていなければ条件を満たせないのだ。
いやいや、深く案じすぎるのはあまりに悲観的かもしれん。たとえ包まれた中身がなくとも、空や虚無を包んでいると言い張れば良いのだから。つまり何が包まれているのかを自身でしっかり説明できる限り、条件2は必ず満たせる。
そう考えると、条件1の方がむしろ問題に思えてくる。単純に縫い目があれば縫ってあるのだとは強弁できない。縫って包むことの必然性を自ら明示せねばならんと言うことか。ううむ、条件1の方がはるかに厄介かもしれない。
なぜ縫って包むのか。そうせねば造形が整わないからだ。待てよ。それなら縫って造形を整えたものである限り、包まれた内容物の如何を問わずぬいぐるみとみなせるではないか。
なるほどなるほど。二つの必要条件で設定されたぬいぐるみの定義には、触感、サイズ、重量、愛玩性、可搬性、美的要素などは
よし。改めて、二条件が充足されているかどうかを確認してみよう。
条件1。縫うことで造形を整えてあること。間違いなく条件を満たす。縫い合わせないと存在し得なかったのだから、間違いない。
条件2。何かが包まれていること。これは説明容易だ。『自我』でいい。
「そうか。俺はぬいぐるみだったんだな」
「おい、何をぶつぶつ言ってるんだ? フランケンシュタイン」
【おしまい】
ぬいぐるみの条件 水円 岳 @mizomer
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