第11話 ダンジョン探索の助っ人?

 そんなわけで……俺は流されるまま、ダンジョン探索者になったのだった。そして今日はダンジョン探索者として初の仕事ということで、また俺らは前に探索していた高校へと向かっていた。


「これで正式にダンジョン探索が出来るね、類!」


「もう怖いのはこりごりなんだけどなぁ……」


 言いつつ足を進める……世界にダンジョンが発生して以来、ダンジョンについての情報は溢れかえっていた。朝のニュースでは、どこどこにダンジョンが新たに発見されたとか、誰々がダンジョンの10階層を突破したとか……。


 やはり人間というものは、新しい物には目が無いらしい。もちろん俺らダンジョン探索者にも注目は集まっていて……現在ではダンジョン配信には多くの人が集まり、ダンジョン探索者は小学生のなりたい職業ランキング1位に輝いているらしい……こんなんに憧れないで、ちゃんと勉強しろ。


「せっかく探索者になれたんだから、いっぱいダンジョンに行って配信しなきゃ! これは私達に課せられた義務なんだよ!」


「お前なぁ……怖くないのか? まだダンジョンについて分からないことだらけで、最悪死ぬかもしれないんだぞ」


 そう言うと、彩花は俺の方を向き……ぎゅっと拳を握って。


「……もちろん怖い思いもあるよ。でも私は未知の物にとってもワクワクしていて。私が一番最初に誰も見たことのない物が見れるんじゃないかなって、それを誰かに取られると思ったら、待つことなんて出来ないの!」


「時代が違ったら、きっと彩花は冒険家にでもなってただろうなぁ……」


 感心したように俺は言う……もちろん俺もそんな気持ちが全く無いと言ったら嘘になるけど。それでも、彩花みたいに恐怖に打ち勝ってまで進もうとは思えないのだ。


 それでも俺が着いてきてるのは……それ以上に彩花の側にいたいってことなんだろうなぁ……そして彩花はあっけらかんと。


「ふふっ……まぁでも、もし私が危なくなったら、類が助けてくれるもんね?」


「いや、マジで期待はしないでくれよ……?」


 前回あのボスモンスターを倒せたのも、運に左右されたところが大きいし……雷属性が弱点じゃなかったら、多分全滅していたからな。もしも弱点が無かったら……って考えるだけでも恐ろしい。


「……あっ、そういえば。今回、私達のサポートをしてくれる人が来てくれるみたいだよ! 社長が言ってた」


「塩沢さんが?」


 誰か助っ人を用意してくれたのだろうか? でもスカサン事務所には、俺らしか探索者はいないはずなんだけど……もしかして外部からの探索者か? フィジカル担当の、ムキムキマッチョマンでも来てくれたら頼もしいかもな……。


 そんなことを思いながら更に足を進めて。俺らは彩花の通っていた高校……ダンジョンの入口に到着した。


 そこには。猫背で肌の白い、長髪の少し不健康そうな少女が、ダンジョンの入口前に立っていて……その子は俺らを見るなり、視線を逸らしながら話しかけてきた。


「え、えへっ。も、もしかして……お二人がルイさんレイさんですか?」


「そんな、きんさんぎんさんみたいに言われても……ってかあんまり外で、俺らの名前は言わないでくださいね」


「あっ、ごめんなさい……んふへへっ。本物だ……」


「……」


 なんかちょっと独特だな、この子の喋り方……。それで彩花は怖気づく素振りも見せず、いつも通り愛嬌のある喋り方で。


「うん、私がレイだよ! それで……あなたは、助っ人の子かな?」


「あ、そっ、そうです。私は倉本蜜柑くらもとみかんって言いまして……高校生で……えっと、蜜柑もダンジョン探索者でして……こ、これ見てください」


 そう言いながら蜜柑と名乗った少女は、小さなカードを取り出した。それは事前に俺らが貰ったものと同じ、探索者として認められたことを示すカードで……そこには名前や住所、顔写真などが添えられていた。


「うん、どうやら本当みたいだね!」


「改めて見ると、本当に免許証みたいだな……」


「あっ、実際に本人確認証としても使えるみたいですよ……こ、これでネカフェの会員登録しましたから……ふへへ」


 ……ちゃんと使えるんだ。こんなの出したら、店員さんびっくりしそうなもんだけど……と、俺が思っていたことを彩花が聞いていて。


「へー、使えるんだ! 出してびっくりされなかったの?」


「まぁ、されましたね……やっぱりダンジョン探索者は、まだ全然いませんから」


「そうなのか?」


 あれだけニュースやつぶやいたーで話題になっていたら、若者なんかは勢いで探索者になりそうなもんだけど……と、そこで蜜柑が説明してくれて。


「はい、探索者になるには適正能力テストってのが必要なんです。筆記や実技試験を合格して、初めてなれるんです……誰でも簡単になれるわけじゃないんですよ」


「へぇ、そうだったのか……」


 まぁ誰でも簡単になれたら、大変なことになるだろうしな……それなりに試験も難しかったりするのだろう。


「まぁ……お二方は国のルールが整備される前にダンジョンに行って、二人とも能力が覚醒して、スカウトされたという極めて特殊な例だったので、試験は必要無かったみたいですけどね……ふへへ」


「あはは……」


 俺は乾いた笑いを返す……ちょっとせこいけど、まぁ運も実力のうちだ。そして彩花はこっちを向いて、嬉しそうに微笑んで。


「ふふっ! つくづく類はスカウトに縁があるね!」


「まぁ……両方とも、お前のお陰なんだけどな」

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幼馴染VTuberのダンジョン探索配信に一度だけ出演した結果『超神回』と話題になり、ついでに探索者のスカウトまで来た件について 道野クローバー @chinorudayo

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