第26話 帝王切開ー元老院の処分規定ー
E冠は11月14日に完成する。古い冠は捨てるしかないと判断したのはオルレアンだった。
オルレアンは入婿でMjustice-Law家に狂信的な崇拝者だったから、とにかくMjustice-Law家を阻害するものに対しては容赦なかった。
基実くんのおかげと言ってはなんだけど、オルレアンが入婿となったことで果たされなかったアルバートとの約束が婚姻なく達成できたことは誰もが喜んでいた。
「本当は俺が萌乃さんと結婚するはずだったんだ」
いまだにお酒が入るとオルレアンとアルバートは喧嘩腰にこの話をするらしい。一足早くオルレアンが時空旅人になったのは祖母である萌乃さんが頭を下げたからだと言う。
Libelawの家とJurywknow家は曽祖父の代で婚姻関係を達成していたから次はConsavayw家だと話していた時に先の戦争が起きてしまった。Jurywknow家に女の子が生まれたことでこの島は復興を遂げたと言っても過言ではない。ジョシュアにとってオルレアンは最も信頼できる銅河原の才覚があった。三観蔵という名前で活躍していたと言ってしまうと、三閉免疫不全後は支障が出てしまうからと公にはなっていないけれど。
盗まれたE冠のルーツであるLustrevはしばらく声が出ないほど体を壊されていた。発見されたE冠は右側が硫酸で溶かされていた。どうやらLutrevを臓器腐食にしてしまうつもりだったらしい。麻野さんやスカーニーの時と同じだ。冠を盗んで硫酸で溶かして臓器腐食にして捨ててしまう。
「もう使えないじゃないですか」と亜種白路はAmadeus Juryに審理を要求するのだ。
危機一髪だったと思う、とあたしが言うとLustrevはあたしを小部屋に閉じ込めた。
「君はしばらく僕以外とは会わないで欲しい」。
鍵がかけられているわけじゃないのにあたしは部屋から上手に出られなかった。
彼が帰ってくるまであたしはその小部屋でLustrevのことだけ考えなければならなかった。
11月8日に鍵が開けられて、久しぶりに外出すると偶然にもヨハネス・エリヤ=栗生と再会した。
何も言わずあたしの隣に座る彼。言葉がなくてもなんとなくわかってしまう奇妙さ、4年ぶりだった。
「名前は?」
「まだ決めてない」
「候補は?」
「めぐみ」
「男で?」
「あなたと同じがいいから」
「好きにすれば」
通りすがりの20秒。
あたしたちは2ヶ月後再会を約束した。
11月10日、Lustrevはあたしが憔悴している姿を見てこう言った。
「大切なものは閉じ込めておくしかないって思っちゃう男の気持ちわかった?」
Lustrevは優しい。でも強くない。あたしはオルレアンの孫だ。優しくないけれど強い自負がある。
血が混じって新しいE冠がいよいよ完成する。その時にあたしはきっとLustrevに言うだろう、
「大切なものはふたりで作るものだって考えているのがあたしよ。わかった?」
帝王切開-元老院の教育儀礼- 恩賜芍薬/ Grace Peony(♂= @falg-book
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。帝王切開-元老院の教育儀礼-の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。