第25話 Rumer belong to Gossip

なんだか変な噂が蔓延していた。10月の初旬から噂はあったからあたしには内緒にしていたらしい。でももう10月も終わるからということで帝都がネタバラシをしてくれた。


あたしたちの教育儀礼が公の雑多な場所で行われているという噂が出ていたらしい。

麻野さんはそこに目をつけて亜種白路の実態調査に役立てていたらしいのだけど、何も知らされていないあたしは本当に毎日死にそうになりながら学校に通っていた。


教育儀礼と学校は違う。あたしがなんで学生かといえば、私職として大学生を選んでいるからで、例えば帝都や基実くんの場合はこの私職が別の場所で成立しているから大学には帝都も基実くんも来るはずがないのだ。もちろんセオや群青も同じことが言える。


なんだかこの国の人たちは天下泰平で羨ましいなあと呆れてしまった。


大学で嫌な目にあっていた理由がわかって麻野さんに文句を言ってやろうと思った矢先、麻野さんは三観蔵として立ち上がって目の回るほど忙しく過ごすようになったから文句のひとつも言えなくなってしまった。それなら栗村さんにと思ったのに、栗村さんも資清として立ち上がったからやっぱりあたしは文句を言えないで消化不良を

起こしていた。


こんなときいつもサンドバックにされるのが帝都だけど、最近帝都に会えない日々が続いていたからどうも一緒にいると甘えてしまってサンドバックの用を成さない。フラストレーションが解消されないあたしは群青にやつあたりしてやろうと模索した。


「あたしイナゴ食べられるよ。群青は食べたことないの?」

「ないね。食べたいとも思わない」

「えー!美味しいのに。食べてごらんよ」

「どこで食べられるの?」

「えーっと、、、どこだろう。でもジビエみたいなものだよ」

フンっと鼻で笑ったその瞬間をあたしは八つ当たりの好奇として見逃さなかった。しかもその後にあろうこうとか「ホラ吹きが」とまで言ったのだ。

ゴングが鳴る音はあたしは勝手に創作した。


「めぐ、落ち着きなよ!」

右手を振り上げたときになぜかセオが割って入った。群青はすでに机の下に隠れていてあたしはこのまま右手を振り下ろしていたら机を直撃し、複雑骨折してたかもしれない。セオはやっぱり優しい。

「ありがとう、セオ」

セオは怪訝な顔をした。なんでお礼を言ったのにこんな顔をされなければいけないの?とあたしが泣きそうになると、セオは冷静にこう教えてくれた。

「めぐ、イナゴってイナゴ科目だよ?君、そんなものを俺たちに食べさせようっっていうの?」

血の気が引いていく。

「イナゴたちはホラ吹きだって君もわかっているからイナゴ科目って位置付けをしたんだろう?」

真っ赤なりんごほっぺが青リンゴに変色していく。


「愛してるよ、めぐ」

群青が優しくそう言って微笑んでくれる。あたしが勘違いしてどうしていいかわからない状態であることを察知してくれたんだ。

あたしは恥ずかしくてKick Backさえできなかった。


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