第24話 Root and Branch

「ねえ、翠蘭さん、、そろそろお母さんって呼んでもいい?」

鏡の前で何度も練習している。翠蘭さんは年齢差から言えばあたしにとってお姉さんのような存在だからお母さんと呼ぶことがどうもできない。新をつければ、なんとなく若い感じがしていいかなとかそんなふうに思って新お母さんとは呼んでいるけれど。


衣子さんのことを旧お母さんと呼んでいる。衣子さんは嫉妬深くてストレート、あたしは衣子さんの生き写しのような性格だ。一度だけ時空旅人になった衣子さんに翠蘭さんについてどう思っているのかを聞いてみたいと思ったことがあった。

昨晩その旅に出ようと思った時に、小包が届いてしまったからあたしは足を止めざるを得なかった。


授業中も翠蘭さんのことを考えるとついつい上の空になる。


今はなぜ死刑囚の死刑執行が遅延を起こしているかという授業をやっていて、Mjustice-Law家の烏鷺棋に絡めて論述せよと課題も出ている。


つい先日、司法の立場が明確化され分業されたことにより、あたしはどちらを元に書けばいいかも悩んでいるところだった。


家族のこと、仕事のこと、勉強のこと、それからフィアンセのこと。

毎日とにかく考えることばかりだった。


「被害者家族は加害者が社会的に活躍していると理解していると思いますか?」

ビルとセバスチャンが隔週で授業をしてくれる。今日はセバスチャンの担当週だ。


「理解していると思うも何も違う名前で似た顔だったら理解していてもそれ以上のことなんてできないじゃない。加害者得の世の中がなんでできたのかってこと考えれば解決するんじゃないの?」

教室の雰囲気が最近声となって聞き取れるようになった。

「お嬢様きたー」という青ざめた声がさざめいている。


加害者の人権は被害者の人権よりも重いのだろうか?被害者が殺されたから加害者も相当の人権により償うために死刑に処せられた。死刑執行の遅延は法律の機能不全でもある。機能不全を起こしたい人がいたのかもしれない。加害者得の世の中がなんでできたかという話に繋がる。


「烏鷺棋的立場から見れば、彼らは次代のためMjustice-Law家は法律未発達未確定だと言えるが、当代は実務者であるから同じMjustice-Law家でも法律施行と捉えられる。しかし、どちらもJurywknow家の相続者であればどちらも正しいと言える。機能不全でなくとも機能不全だと捉えることができるし、法律施行だったとしても法律未発達未確定だと捉えることもできる。よって死刑執行は烏鷺棋により遅延が起きている。また機能不全だと主張する亜種白路が少なからず人権を盾としながらMjustice-Law家に刀を振り翳していることも事実だ」


100点の解答ができたと嬉しくてスキップしながら家に帰ると、小包が再配達されていた。中から出てきたのは麻野さんだった。自分の解答に自信が持てなくなってきた。衣子さんからの手紙も入っている。


気持ちがどんよりしてきた。

翠蘭さんが心配そうに遠くからあたしを見ている。どうしよう、、、

あたしはしばらく考えて翠蘭さんに甘えることにした。気持ちがどんよりしたことを包み隠さず見せられるのは家族だけだから。





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