本屋

斉藤一

本屋

 私は本屋の匂いが苦手だ。あの匂いを嗅ぐと、何故か必ずトイレに行きたくなるのだ。

 私は、ある昔に発刊された本を探しに本屋を巡ったことがある。絶版になっているため、大きな書店にすら置いてないのか、売り切れたのか、どちらにしろどこにも見つからなかった。

 そこで私は、個人で経営されている本屋で探す事にした。そこなら、もしかしたら置いてあるかもしれない。そう思って近くの本屋から片っ端に探していった。

 やはり、プレミアがついて数万円になった本は置いてないか……。そう思って諦めかけたころ、目立たない場所に本屋らしき建物が見えた。藁にも縋る思いで、私はその店を最後に、諦めようと思った。

 入ると、やはり本屋独特の匂いがする。しかし、ここはそれだけではなく、何かかび臭い臭いも混じっていた。本を見ると、包装はしてあるものの、誰もここに来ないのか、それとも掃除すらしないのか、うっすらと埃が積もっていた。

 私の呼びかけにも、誰も店員らしき人物が出てこない。それなら、自由に見させてもらおうかと本棚を眺める。さすがに、埃が積もるほど誰もお客さんが来ていないだけあって、古い本も普通に置いてあった。

 

「これは期待できそうだ。」


 私は、ひたすら本を探した。この本屋は、そうとう店主が手抜きなのか、題名順にすら並べられていなかったので、探すのが大変だった。しかし、ついに目的の本を見つけることができた。私はその本を持ってレジに向かうが、やはり店員が居ない。

 私は急にトイレに行きたくなった。万が一にも横取りされないように、本を確保したままトイレに向かう。

 トイレ付近は、何とも言えない嫌な臭いでいっぱいだった。掃除されていないのだろうか?

 トイレを開けると、そこで人が首をつっていた。私は、本を抱えたまま家へと逃げ帰ってしまった。


 私が探していた本の題名は「必ず自殺できる」だ。これは期待が持てる。

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本屋 斉藤一 @majiku77

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